2015年、コントの中のフレーズ“ダンソン”でブレークしたお笑いコンビ「バンビーノ」。7月10日をもって石山大輔さん(35)が石山タオルに、藤田裕樹さん(34)が藤田ユウキに改名しました。今、なぜ改名をしたのか。そして、改名がもたらした思わぬ影響とは。名前を入口にコンビの本質を赤裸々に語りました。
改名の理由
石山:まだ変えてほとんど時間は経ってないんですけど、いろいろな方から連絡をいただきました。名前をきっかけに、改めて、皆さんとの関係を再認識するというか、本当にありがたいことだなと思っています。
コロナがあって、自粛中にいろいろなことを考えたんです。人との接触を避けると言うけど、よく考えたら、自分の場合、連絡する友達もそんなにおらんなと。
そして、僕らのネタの“ダンソン”についても考えたんです。コロナで営業は一切なくなってしまった。“ダンソン”を披露する場もほぼほぼなくなってしまった。
そして、もし披露する場があったとしても、あのネタは最終的には動物を僕が捕まえるネタなので、相手の首をヘッドロックみたいに絞める形になる。要は、ものすごく密着する形になるんです。となると、今の世の中を考えると、非常にやりにくいネタになってしまった。これは、実はとても大変な状況だと。
そこで、何かしらプラスというか、新たな動きが必要なんじゃないかと。そこで考えたのが改名だったんです。
藤田:コロナのずっと前から、石山は名前を変えることはずっと言ってたんです。石山大輔という名前が、なんともカタイと言いますか、名前としてゴツゴツしてると。そこをもう少し柔らかく、軽くした方がいいんじゃないかと。
石山:じゃ、何という名前にした方がいいのか。僕はブラジルにサッカー留学していたこともあるので、ロナウドとか、外国人らしい名前をつけるという案もあったんですけど、そこにふとタオルというワードがポンと浮かびまして。
まず、タオルだったら、使ったことがない人はいないし、持ってない人もいない。毎日使うものだし、その日、一緒に仕事をした人が夜にお風呂に入ってタオルで体を拭く時に、また僕のことを思い出してもらえるんじゃないかなというのもあり(笑)。いろいろな思いを込めて、タオルという名前を選んだんです。
タオルの持つ優しいイメージもそうですし、タオルという特定のものを名前に付けたら、その関連の仕事もいただけるかもしれないし、どちらにしても、改名してマイナスはないなと思いまして。
藤田:僕はもともと変えるつもりはなかったんですけど、石山が変えるなら、僕も…みたいな感じで変えてみようかとなったんです。どうしようかなと思ったんですけど、でも、タオルまで思い切って変えるのもアレやしなとなって、とにかく画数を見てみようと思って。ネットの無料で画数を見るサイトを見てみたら、胸糞が悪くなるくらい画数が悪かったんです。こんなん言うたらアレですけど、親はどう思ってつけてたんやと思うくらい(笑)。
“誰からも称賛されず、孤独になる”と(笑)。そこで画数を見たら、カタカナのユウキなら、今まで見たことがない“大大吉”という評価で、じゃ、そのパターンにしてみようとなったんです。
周りとの距離
石山:僕は本当にガラッと変えましたんで、改名を知った芸人仲間やスタッフさんがいろいろ言ってきてくださって。「なんでも、吸収できるように改名したんやろ」「タオルだけに、干されんようにしろよ」とか、うまいことタオルにかけた言い回しみたいなことをたくさんいただきました。
そうやって、皆さんがいろいろな言葉をくださる中で、ふと、気づいたこともありまして…。自分で言うのはナニなんですけど、僕に対する周りのイメージには「怖い」とか「ストイック」とか「近づきにくい」というのがこれまではあったと思うんです。
でも、タオルになった瞬間、後輩とかが「メッチャいいですね!」とすごく近い距離で話してくるようになった。このスッと近寄ってきてくれる感じというのは、今までには正直なかったものでしたし、名前をきっかけに、周りと話す量が一気に増えました。逆に言うと、今までどれだけ孤独にやってたんやと思いましたけど(笑)。
これも自分で言うのはナニなんですけど、改名によって、まとっている空気も変わったというか、そういう部分があったんだなと感じています。
藤田:正直、本当ならフラットな関係であるはずの同期の中ですら「石山さん」と“さん”付けで呼ぶ人間もいてましたしね。
石山:サッカー留学のこともあって、海外的なノリというか、先輩でも物おじせずにグッといったりすることがあったのは間違いないと思います。それが物議を醸すみたいなところも、これも正直あったと思います。
相方とのネタ合わせでも、作家さんとの打ち合わせでも、僕がストイックというか、かなりキツくいってしまうところもあった。そんな話がどんどん回っていって、いつの間にか、後輩とか周りにとっての石山像みたいなのが出来上がっていったんだと思います。
“ダンソン”から次へ
石山:“ダンソン”と呼ばれて「バンビーノ」とは呼ばれない。そんな流れもありましたけど、タオルになったら、新しく生まれ変わった感があると思うんですね。新たな領域に向けて、そこにレールを作るという意味もありました。
あと、賞レースで次のステップとなると、もう2015年には「キングオブコント」で準優勝させてもらいましたし、あとは優勝するしかないんです。もう35歳になって、その一点の目標だけ、年に一組だけのそこを唯一の目標としてやるのが果たし良いのか。
例えば、相方は料理が得意でその関連のお仕事をいただいてもいる。じゃ、僕は例えば、タオル関連とかのお仕事をいただけたりしたら、また違う注目のされ方をすることになる。
「キングオブコント」優勝以外にも、出方をいくつも持っておく。それは現実的に、必要なことなんだろうなと。そんな“糸口”はいくつあってもいいと思うんです。
藤田:タオルだけに、糸口がね。
石山:ありがとう(笑)。もちろん優勝は目指す。ただ、そこだけでなく、“ダンソン”の時もそうだったんですけど、自分たちで風を吹かせていくというか、何かしら動く。そういうことも必要なんじゃないかなと思いまして。
藤田:タオルだけに“毛羽立たせる”というか…。
石山:それはタオルが傷んでしまってるもね(笑)。すみません、まだ定まってなくて、こういうそぐわないものも混じってて(笑)。
ま、でも、話しかけてくる人が急に増えたという話をさせてもらいましたけど、これも本当に正直な話、それは僕の内面もかなり変わった部分があるのかなと思っています。
これは、かなり入り組んだ話になるんですけど、コント師の性というか、これまでも素の自分というよりも、何かコントなどのキャラクターになっている方がすごくやりやすかったんです。特に、僕はそこが強かったというか。
だから、名前をタオルに変えた時に、自分は自分なんですけど、石山大輔に石山タオルという芸人のキャラクターを乗っけたようなイメージなったんです。石山タオルという役を演じるというか。そうすると、すごく頭のフットワーク軽くなって、いろいろなことが言えたり、できたりするようになったんです。
例えば、誰かがステージでスベった時に、石山タオルなら「スベらないように、しっかりと舞台を拭いておきましょうね!」みたいなことがスッと言えるんです。でも、これが石山大輔だと、自分の中でこのボケは軽すぎる。でも、タオルなら、何の抵抗もなく言えるんです。タオルになったことで、そこの感覚ができたことはとても大きいことですし、自分でも新たな発見でもありました。
藤田:一つ難点があるとするならば、こうやって、改名について話せば話すほど、石山はどんどん深い領域に話がいって、僕の改名はより一層、薄っぺらい印象になってしまう…。「藤田は、なんちゅう、アホな改名したんや」という後味になるのだけは、僕が徐々に慣れていきたいと思います(笑)。
(撮影・中西正男)
■バンビーノ
1984年12月10日生まれで愛媛県出身の石山大輔と、85年7月30日生まれで大阪出身の藤田裕樹が08年にコンビ結成。ともにNSC大阪校30期生、リズミカルなネタで注目され「キングオブコント2014」で決勝進出、「キングオブコント2015」では準優勝。石山はブラジルへのサッカー留学が経験あり、藤田は落語家・桂きん枝の甥という顔も持つ。2020年7月10日、石山は石山タオルに、藤田は藤田ユウキに改名した。
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July 10, 2020 at 05:30PM
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