人との別れに傷ついたときはどうすればいいのか。総合格闘家の青木真也氏は、「人との距離感や関係性は、惑星のように常に変化する。そう考えれば別れに傷つくことはない」という――。 【写真】総合格闘家の青木真也氏 ※本稿は、青木真也『距離思考』(徳間書店)の一部を再編集したものです。 ■部屋の窓から私物をぼんぼんと放り投げられた 人との別れを過剰に気にする人は多い。「自分が○○したから別れることになった」「相手から○○されたから別れることになった」など、別れの原因になったことをいつまでもクヨクヨと考えてしまうのだ。 あるいは別れる相手を恨んだり、憎んだり。僕は女性から別れ際に、 「呪います」 と言われたことがある。もちろん僕にも原因があったわけだけど、なぜかこれまでに数人の元彼女からこの言葉をかけられた。「呪ってやる」なんて、恐ろしいイメージだけど、複数から言われたということは、案外、その子たちが極端だったというわけではないのかもしれない。よくわからないけど。 僕は人間関係を「惑星」みたいなものだと考えている。 ある時期にはぐっと近づくけれど、また別の時期には逆に離れていったりと、その距離感や関係性は常に変化する。 どんなに距離が近くなった相手であっても、何らかの事情ができて以降は、それなりの距離を取らないといけなくなる。ファミリーや友人との関係に限らず、仕事や家庭においてもそうではないだろうか。 今は別居している妻と生活していたときのことだ。当時から仲は険悪だった。 ある日の深夜、逆上した彼女はとても感情的になって、僕の部屋の窓から僕の私物をぼんぼんと放り投げてしまった。 1階じゃなくて、アパートの2階だったから、「コイツすげえことするな……」と、呆気にとられたのを覚えている。
■関係をこじらせても絶交や絶縁はしない 当時、妻からのLINEには僕のことを責める文章ばかりが書かれていた。 今でもそんな妻にときどき、LINEやFacebookのメッセンジャーで僕は連絡を取ろうとする。2020年の年始にも「明けましておめでとう」と送ってみた。そうすれば、子どもの写真の1枚や2枚は送ってくれるんじゃないかと期待して。 しかし、無視。ずっと既読スルーが続いていて、今もまったく返信はない。 子どもの顔も別居以来ずっと見ていないし、声すら聞けていない。 こんな状況だけど、僕は妻のことを「面倒くさいヤツだな」とは思っても、「あいつの顔なんて見たくもない」とまでは思っていない。いろいろあったけど、憎いとも思わないし、恨んでもいない。 いつかまた会うときが来るか、なんてわからないけれど、将来的に顔を合わせる機会があれば、そのときに許し合えたらいいんじゃないの、くらいに考えている。 何らかの事情で、もともと取っていた距離よりも、さらに遠くなってしまった相手に対しては、 「いつかきっと許し合えるし、わかり合えるときが来る。それまでは『またね』」 と思ってしまうところが僕にはある。 子どもの頃、友達に対して「絶交」という言葉を使ったことがある人は多いだろう。ケンカして「お前とはもう絶交だ! 」みたいに。大人になれば、それがもっと深刻になって「絶縁」と言うのかもしれない。 でも、僕には絶交とか絶縁という考えはない。自分がしたことや相手からされたことが、互いに距離を置くことになった要因のひとつであったとしても、それをまったく気にしていないからだ。 ■人との関係は惑星のようなもの 一方で、自分のほうから離れていったこともある。 どうしても許容できないことをされたときや、「この人と関わっていては危ない」と思ったときなどに、「俺はお前とは付き合いたくない」と相手に直接伝えて、今まで以上に距離を確保するのだ。 だけど、それで関係が終わってしまうというものでもない。 一周回って距離感が元通りになって、仲が復活することもある。時間が解決することは案外多い。再び元のような距離に戻りたいなら、互いを許すことや寛容になる気持ちを、自分の中に持てるかどうかだ。 ただ、離れていく相手を無理に引き止めることはしない。去るもの追わず、来るもの拒まずの精神だ。 引き止めてみて「わかった。やっぱりここにいるよ」と言うヤツは、最初から離れるつもりなんかなくて、こちらの出方を試したかったに過ぎない。 だから、ファミリーの関係においても、僕は別れを気にすることはない。自分にとって居場所が必要なときに入ってくればいいし、今は必要ないと思えば出ていったっていい。そのゆるやかさこそファミリーだから。 人との関係は惑星のようなもの――そう考えれば傷つくことだってない。
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August 10, 2020 at 07:16PM
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複数の元彼女から「呪います」と言われた格闘家が人間関係で心がけていること(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース
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