「悪の巣窟」と呼ばれた仙台市中心部の廃虚ビル「ホテル木町」の解体作業が始まった。反社会勢力が不法占拠し、関係者に違法に賃貸していたビルは、かつて国会議員や宮城県職員が逮捕された事件の舞台にもなった。ビル管理者の許可を得て建物の内部に入った。(報道部・勅使河原奨治、コンテンツセンター・藤沢和久)
壊された鍵穴
「ここは大麻取締法違反の疑いでガサ(家宅捜索)が入った部屋です」
ホテル木町管理組合の理事長(59)が紹介してくれた2階の一室。入り口のドアに横文字のステッカーが何枚も張られていた。鍵穴が壊されたドアを開けると、棚にビニール傘が掛けられ、ごみや服、郵便物が散乱する。飲みかけのペットボトルの周りでハエが1匹、止まっては飛び立つ。
住人の男たちは2019年6月、マネキン人形の中に大麻を隠し入れて米国から輸入したとして大麻取締法違反などで逮捕された。部屋は当時のままのようだ。
水道管を勝手に敷設
「犬のふんに気をつけてください」。薄暗い廊下で理事長が注意を促す。違法に住み着いた人たちが空き部屋で犬やネコを飼っていた。
廊下に出ると、朽ちて剥がれた天井。勝手に敷設された水道管が、天井から壁伝いに部屋に入る。どの部屋もドアの鍵が壊されている。一部のドアは廊下側に金具が取り付けられ、南京錠がぶら下がっているが、部屋側には金具がない。誰かを監禁するための部屋だろうか。
ホテルは1999年1月、経営会社の破産に伴い廃業した。裁判資料などによると、競売を経て在日韓国人が経営する金融会社と、指定暴力団系組員が関係する会社が権利を主張した。最終的に暴力団側が居座り、違法に客室を賃貸するようになった。
震災直後は30人近い「住人」
理事長によると、東日本大震災直後は30人近くが住みつき、違法風俗店だった部屋もあるという。
3階の312号室の前で女性用の下着に目が留まった。光沢のある青いキャミソール。サイズはL。住人は大柄の女性かもしれない。
部屋にはヒールの付いた靴とコートが散乱し、カウンターの上に付けまつげとオレンジ色のマニキュア、ホストクラブの名刺、組員が関係する会社宛ての電気料金払込票が放置されている。
廊下の突き当たりのガラスドアを開ける。黄ばんだ液体が入ったペットボトルが何本も転がる。ふたを開け臭いを嗅いでみようとも思ったが、勇気が湧かずに断念した。
ピンクチラシに電話してみた
ホテル木町は地上7階、地下1階。1~3階がホテル、4~7階は分譲マンションだった。
階段付近に放置されたごみの山を踏み越え、4階に上がる。413号室の床に風俗店の「ピンクチラシ」が散らばる。2000年代初頭まで仙台市青葉区の国分町一帯でばらまかれた。
チラシの番号に電話してみた。ピピピッと音が鳴って4コール目。
「はい…」
中高年と思われる女性のよそよそしい声。
「ピンクチラシを見て電話しました」
女性は間髪を入れずに声を荒らげた。「結構です」。電話が切れた。
分譲マンションの電気や水道などのインフラ設備は、ホテルの破綻に伴って使えなくなり、住人も徐々にいなくなった。
ほとんどの部屋のドアノブがないことに気付いた。部屋の中の金属類も剥ぎ取られたような形跡が見える。
「不法占拠していたやつらが外し取って売ったのだろう」(理事長)
◇ ◇
ホテル木町は国分町など繁華街に近く、東北大医学部にほぼ隣接する好立地。分譲部分には当初、大学関係者も住んでいた。廃虚となり解体される今、登記簿で区分所有者をたどると、この地に関わった数々の事件の痕跡が浮かび上がった。
[ホテル木町]仙台市青葉区木町通2丁目に立地し地上7階、地下1階。1977年開業。経営会社が破産する99年1月まで営業した。1~3階が宿泊用で4~7階は一般に分譲された。大通りに面し、近くには木町通小や仙台二中が立地する。
※連載「仙台・ホテル木町解体」の(下)は9日正午ごろ河北新報オンラインニュースで公開します
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