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Friday, May 27, 2022

ソフトバンクは今まで以上に「5Gらしさを追求」 5G SAと5G-Advancedによる“真の5G”へ:ワイヤレスジャパン 2022(1/2 ページ) - ITmedia Mobile - ITmedia Mobile

 5月25日から開催されている「ワイヤレスジャパン 2022」。2日目の26日には、ソフトバンクの常務執行役員 兼 CNO(Chief Network Officer)の関和智弘氏が、「ソフトバンクが目指す超デジタル化社会」と題して講演し、ソフトバンクが5Gや5G-Advancedの技術を活用して社会を変革する取り組みについて語った。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク ソフトバンクの関和智弘氏。CNOの肩書は、米Sprintのネットワークを改善する際に孫正義氏が自ら名乗ったものとのことで、関和氏は3代目のCNO

 ソフトバンクは2020年3月27日に5Gの商用サービスを開始。当初は「数機種のスマートフォン、駅前やランドマークのみで5Gを提供」していたが、現在は5G対応端末は全35機種に。ミリ波にも対応している。2021年10月にはSoftBank Airの新機種「Airターミナル5」でスタンドアロン(SA)方式に対応している。PCやシンプルスマホにも5G対応端末を広げ、「老若男女、あらゆる方に5Gを届けられる」ようになっている。

 5Gのエリアは2022年3月末に人口カバー率90%を突破。ソフトバンクはLTE用の周波数を5Gに転用しているが、これは「いち早くお客さまに5Gを体験していただく」ことを重視したためだという。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 周波数の転用などで、他キャリアに先駆けて5Gの人口カバー率90%を2022年3月末に達成

 「大変苦労も多く、現在NSA(ノンスタンドアロン)方式で展開しているが、LTEと5Gの連携が必要なサービスなので、5Gと連携するLTE側も整備しながら進めている。そうすることで、“パケ止まり”のないサクサク感のある5Gの提供にこだわって広げてきた」(関和氏)

 ただ、苦労して5Gエリアを広げても、ユーザーが5Gのメリットをあまり感じていないことも認識している。アンケートを取ると、ユーザーは5Gという言葉は知っているが、内容については半分が「分からない」と回答するという。また、知っていても「高速大容量」という認識に偏っている。5Gがどのように使われていくか、5Gで何が変わるのかということについては、ユーザーに浸透していない。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5Gのメリットがユーザーに理解されているとはいえない

 メリットが浸透していない理由は、「提供しているサービス内容に少しあるかもしれない」と関和氏。ソフトバンクは、FR(多視点)、VR、ARなど、データ量の多いリッチな映像やクラウドゲームを5G向けサービスとして提供している。5Gの展開が早かった韓国や中国でも、サービス内容は日本と大きくは変わらない。こうした映像系のサービスはLTEでも利用できないわけではないので、ユーザーは5Gならではとは感じない。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5G向けサービスは、世界的に映像やゲームといった高速大容量通信を必要とするサービスが中心

 そこで2022年度以降は、今まで以上に「5Gらしさを追求していく」(関和氏)。産業利用や社会変革を担うようなものと、エンドユーザーが5Gらしさを体感できるもの両方の展開にこだわっていくという。

5Gらしさは「リアルタイム大容量通信」

 5Gらしさを提供していくために、これまでの高速大容量通信に、超高信頼、低遅延を追加してリアルタイム大容量通信を提供することに注力していく。そのために重要になる技術が5G SAだと関和氏はいう。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 超高信頼、低遅延を追加してリアルタイム大容量通信を提供し、5Gらしさを追求する

 5G SAは、接続制御をつかさどるコアネットワークが5G用のもので構成される。なお、5Gだけを提供するわけではなくLTEの基地局も追加していくので、5Gをフル活用しつつ、5Gのない所ではLTEを補完的に使って日本全国にサービスを提供していく。5G SAになったからといってエリアが狭くなるわけではなく、5G SA以外のエリアはLTEが利用できる。

 5G SAになって何が変わるのか。ユーザーには「分かりにくい地味なポイント」だが、5Gにダイレクトにつながるので、5Gの立ち上がる時間、例えば5Gのピクトが表示されるまでの時間が格段に速くなるという。

 また、NSAでは移動中にLTEと5Gが切り替わる際にもたつきがあるが、5G SAは5Gで全て制御できるようになるので、そのもたつきが解消される。5G SAでは「基本性能が非常に上がる」ことが期待できる。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5G SAになると5Gへの接続開始が素早くなり、移動時の体感も向上する

 こうしてネットワークの基本性能を上げ、さらにMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)を組み合わせることで、より5Gらしい低遅延を実現すべく準備を進めている最中だという。

 5GでMECを使うと、コアネットワークのゲートウェイ部分をいろいろな所に配置できるようになる。CUPS(C/U分離)という技術がそれを支えており、コントロールプレーンは日本の中心部分に置く構成をとりながらも、ユーザーのアクセスポイントに近い所にゲートウェイを配置することが可能となる。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5GでMECを使うと、CUPS(C/U分離)技術によってデータ処理を分散でき、遅延が少なくなる

 3GPPの設計目標である遅延1msは「相当ハードルが高い」が、日本に7カ所から10カ所程度のゲートウェイを配置することで、日本全国どこにいても10msから5ms程度の遅延を実現できる見込みだ。1msにいかに近づけていくかが今後の努力ポイントになると語った。

 ゲートウェイがある所で、AI処理をできるようにすることも重要なポイントだ。現在はインターネットの先でAI処理を行うケースが多いが、この場合、ネットワークを通るデータ量が非常に多くなる。AIをエッジサーバに組み込むことによって、画像解析などのAI処理をそこで終えることが可能になる。ネットワークを通るデータ量が少なくなり効率化も図れる。MECに対するニーズは非常に高まると関和氏は見ている。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク エッジサーバでAI処理を行うと、ネットワークを通るデータ量が少なくなり効率化できる

 このMECは、品質要件に合わせてネットワークを仮想的に分割していくネットワークスライシングと組み合わせることで、5Gらしい体感を提供できるという。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 例えば、大容量用、低遅延用のようにネットワークを仮想的に分けることによって、ユーザーが行いたい通信に最適化されたネットワークを提供するネットワークスライシング

 ネットワークスライシングの難しさは、「エンド・トゥー・エンドで仮想ネットワークを作る」ことにあるという。

 「無線(RAN)からトランスポート(伝送部分)、モバイルのコアネットワークまでエンド・トゥー・エンドで仮想ネットワークを作らなくてはならない。お客さまのニーズに合わせて、仮想ネットワークを最適な品質で提供する形に構成する所に、今後、努力すべきポイントが残っていると考えている」(関和氏)

 ネットワークスライシングを提供する形態として、3GPPで検討されている仕様の1つが、スマートフォンのアプリケーションごとに使うスライスを分けるURSP(UE Route Selection Policy)だ。Webブラウジングでは普通の品質、動画ではより大容量など、ユーザーが意識せずに最適なネットワークを使うというコンセプトになる。

 これが提供できるようになれば、コンテンツプロバイダーがスライスを利用し、ユーザーに高品質なサービスを提供できるようになる。「それはもう少し先になるかもしれない」とのことだが、注力していくと語った。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク スマホのアプリケーションごとに利用するスライスを分けるURSP

5G-Advancedは2025年頃

 3GPPでは、Release 18で高度化した5G、「5G-Advanced」の仕様を検討している。5G-Advancedの実現は2025年頃とみられ、5Gの本格的な利用の重要なポイントになると関和氏は述べた。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク すでに5G-Advancedの検討が開始されている

 5G-Advancedでは送信時の容量が大きくなり、ドローンなど上空を飛ぶものに対する最適化が行われる。XRなど新しいサービスへの対応もさらに改善される見込みだ。「5G-Advancedが、今後、社会のデジタル化に必要な機能を補完する重要な技術になる」と関和氏は期待した。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5G-Advancedの要件

 現在進めている5G SAと、2025年以降、ネットワークへ本格導入されることになりそうな5G-Advancedの2つを組み合わせていくことで、「真の5G」へシフトするという。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 5G SAと5G-Advancedによって「真の5G」へシフトする

 真の5Gで社会のデジタル化が進む。少子高齢化などが社会課題となっている中、人だけでは目が行き届かず、また、人がするよりも機械やAIが行った方が精度の高いアプトプットを出せる。持続可能な社会の実現には、デジタルのフル活用が必要不可欠だと関和氏は話す。

 デジタルで社会を持続的なものに変えていく技術として、世界各国で着目されているのがサイバー・フィジカルシステムだ。われわれが住んでいるフィジカル空間に対し、現実社会で取得したデータをネットワークを通じて、AIなどで処理するプラットフォームがサイバー空間だ。AI側で必要な課題解決を行い、それを現実社会にフィードバックしていくことによって、課題解決を行うという考え方だ。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク フィジカル空間で得たデータをサイバー空間で解析し、フィジカル空間にフィードバックするサイバー・フィジカルシステム

 このサイバー・フィジカルシステムという考え方が、今後、根付いていくと関和氏は見る。

 「ネットワークとAIプラットフォーム合わせたサイバーインフラストラクチャという考え方が、今後ますます強まっていくと考える。5Gでデジタル社会を作っていく中で、われわれはこのサイバーインフラストラクチャを提供する事業者として貢献していきたい」(関和氏)

ネットワーク+AIで解決する社会課題

 最後に関和氏は、サイバーインフラストラクチャで課題解決するユースケースを紹介した。なお、これらのユースケースでは必ずしも5Gを利用していない。LTEを活用しているものも含まれており、最終的には5G SAを使ってより良いものにしていくという考え方で取り組んでいる。

 ソフトバンクは、建機レンタル事業を行うカナモトと共同で、建設機器を遠隔操作する実証実験を行っている。特徴は建設機器そのものを操作するのではなく、ロボットを遠隔操作して建機を動かしている点だ。5Gの低遅延を生かして実現しており、特に違和感なく操作できるという評価が得られたという。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク カナモトと共同で行っている建設機器を遠隔操作。ロボットを操作するのが特徴だ

 また、クルマと5G SA、セルラーV2Xを活用し、歩行者とクルマによる事故回避を目指した実証実験をHondaと行っている。車載カメラで歩行者が事故に遭う危険性を認識した場合、クルマから直接、もしくはMECサーバを介して、歩行者が持っている携帯端末に警報通知を行う。クルマから目視できない歩行者の場合は、周辺の他のクルマや携帯端末と連携し、歩行者位置の特定を行う。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 社債カメラで歩行者を事前に感知し、MECサーバを介して、歩行者が持っている携帯端末にアラートを送信する

 ドローンを使った物資輸送やインフラの設備点検の実証実験も行っている。設備点検は、ドローンから送信されるカメラ映像を解析することで効率化を図っており、ソフトバンクの鉄塔点検にも使う予定だという。

 映像解析プラットフォーム「STAION」は、通常のIPカメラにエッジデバイスを接続することで、映像データを分析できるソリューションを提供する。画像分析のサービスメニューを用意し、ユーザーが使って、例えば来店者数の把握や、滞留時間などを分析できる。

SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 映像解析プラットフォーム「STAION」。一般のIPカメラと映像解析用デバイスを接続して利用する
SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 「サキミル」は、人流データ、気象データなどを顧客が持っているデータと組み合わせることによって、将来起こることを予測するプラットフォームサービス
SoftBank ソフトバンク 5G SA ネットワーク 社内ベンチャー制度から実用化された「e-kakashi」は、カルビーポテトと共同でジャガイモの育成に応用された。農場にあるセンサーで地中の水分を計測し、AI側で給水タイミングを最適化。その結果、収穫量が最大1.6倍になったという

 関和氏は、5Gネットワークを通じてリアルタイムに情報を上げ、その情報をAIで解析することで、超デジタル化社会への変革を進められると意気込んだ。「2025年以降、このような社会が本当に実現されるように進めていきたい」(関和氏)

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