Pages

Tuesday, July 26, 2022

浦和学院・宮城の154球、敗れてなお「今までで一番楽しい試合だった」 - 読売新聞オンライン

 第104回全国高校野球選手権埼玉大会の決勝が26日、県営大宮球場で行われた。聖望学園が投手戦の末、1―0で浦和学院を破り、13年ぶり4度目の優勝を果たした。春の選抜大会4強で、昨春から県内無敗を誇った浦和学院は、2年連続の頂点にあと一歩届かなかった。聖望学園は、8月6日から兵庫県西宮市の甲子園球場で行われる全国大会に出場する。

 九回。連打と暴投で無死二、三塁のピンチを迎えた。「浦学が負けるかもしれない」。驚きや興奮が球場を包み始め、内野手が後ろから次々と声を張り上げた。

 「悔いを残すな」「俺たちが絶対逆転するから」

 追い詰められた自分に、仲間の言葉はいつもより頼もしく感じられた。雨が強くなり、新しいロジンを手にまぶす。「最後は魂だ」。ギアを一つ上げた。

 余計なことは考えない。捕手のミットだけを見た。フルカウントでも変化球。2者続けて三振を奪った。

 さらに点を取られたら敗色濃厚となる状況で二死までこぎ着けた。「ゼロで抑えれば試合の流れが変わる」。移り気なこの日の天気のように、球場の雰囲気もいつしか変わっていた。

 最後の打者も低めのスライダー。投ゴロに打ち取り、追加点を与えなかった。この間21球。後は仲間が打ってくれると信じて、ベンチへ駆け戻った。

 春のセンバツではチームを4強に導いたが、今大会は花咲徳栄との準決勝で先発したものの五回途中に3失点で降板。ピンチに陥り、力任せになって直球を多投したと反省した。

 この日の試合前、直球に頼らず変化球を織り交ぜようと決めた。「みんなに恩返ししたい」。その一心でマウンドに上がり、9回で154球を投げ抜いた。

 重圧に負けない快投に、森大監督は「今大会で一番。夏の主役にふさわしい」と賛辞を送った。「悔しいが、投げていて一人じゃないと感じた。今までで一番楽しい試合だった」。銀に輝くメダルを胸に下げ、浦学のエースは堂々と球場を去った。(石井貴寛)

 九回一死一塁。2ボールの後、緊張をほぐすように右脚をたたいて息を整えた。セットポジションからの123球目。外角にスライダーを投じると、ぼてぼてのショートゴロで併殺プレーに。優勝が決まり、マウンドで仲間にもみくちゃにされると鬼気迫る表情がぱぁっと明るくなった。

 浦和学院には大きな借りがある。2回戦で戦った昨夏の県大会。2点リードの六回に四球を重ねてピンチを招き、高めに浮いた直球をレフトスタンドに運ばれた。「先輩の夏を終わらせた」。悔やんでも悔やみきれず、大会後は毎晩のようにその光景が夢に現れた。

 同じ失敗はしたくないと、コントロールを磨いた。チームメートを打席に立たせ、内角に投げ続けた。死球を恐れずに気持ちを強く持った。ピンチでも表情を変えず、平常心を保つことも心がけた。

 待ち望んだ相手との大一番は、岡本幹成監督が「今までに見たことがない、一生に一度の投球だ」と舌を巻く圧巻の完封劇だった。直球とスライダーを中心に冷静にコースを突き「超攻撃型野球」の浦学を散発4安打に抑えた。

 「絶対に抑えると強気で投げられた。甲子園でも同じような投球がしたい」。「大きく輝いてほしい」と願いを込められた名前の通り、チームを頂点に導いたエースは大きな夢の舞台に挑む。(宮川徹也)

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 浦和学院・宮城の154球、敗れてなお「今までで一番楽しい試合だった」 - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/kMfuget

No comments:

Post a Comment