佐野市文化会館リニューアル及び文化施設運営事業
昭和54年の開館から44年間、本市の文化芸術のシンボルとなっている佐野市文化会館を、今後も引き続き、より安全に、より快適に利用していただけるよう、大規模な改修工事を行います。耐震診断や施設劣化調査の結果に基づき、躯体の劣化抑制、耐震性の維持により施設の長寿命化と安全性、快適性の向上を図ります。
施設の概要
佐野市文化会館
佐野市浅沼町508番地5
昭和54年築
鉄骨鉄筋コンクリート造
地上3階地下1階
敷地面積32,089.85平方メートル
建築面積5,227.37平方メートル
延床面積7,540.37平方メートル
工業地域
![あくとプラザ4](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/actp1.jpg)
佐野市葛生あくとプラザ
佐野市あくと町3084
平成10年築
鉄骨鉄筋コンクリート造 3階
敷地面積32,607.18平方メートル
建築面積3,416.52平方メートル
延床面積3,540.52平方メートル
市街化調整区域
本事業における佐野市葛生あくとプラザの対象事業は総括管理及び維持管理運営事業のみです。
以下、佐野市文化会館を「文化会館」、佐野市葛生あくとプラザを「葛生あくとプラザ」と表記します。
事業の概要
事業内容
文化会館の改修に係る設計、工事監理、改修工事及び総括管理、維持管理、運営業務
葛生あくとプラザの総括管理、維持管理、運営業務
事業期間及び事業費(予算計上額)
設計、工事監理、改修工事
(期間)令和6年4月から令和9年3月末
(事業費)5,717,074千円
総括管理、維持管理、運営業務
(期間)令和7年4月から令和19年3月31日
(事業費)1,326,896千円
総額 7,043,970千円
大規模改修に伴う、文化会館の休館期間
休館期間 令和6年4月1日から令和9年3月31日
なお、葛生あくとプラザは今までとおり開館します。
大規模改修工事に至る経緯
昭和54年の建設から40年以上が経過し、施設の利用停止につながりかねない設備類の著しい老朽化や性能の劣化が生じております。また、文化会館は、エレベーター設置、トイレ改修等の工事を実施しているものの、社会的な要求の変化への対応を含め、全体的な改修が必要であることが令和2年度に実施した施設の劣化調査において整理されました。
施設劣化調査における主要な改善点
- 音響や空調設備、消防消火設備、給排水設備の老朽化
- ホールの吊り天井構造の改修、屋上防水の修繕
- 外壁、建具の補強、修繕
- 環境負荷やランニングコストが高い設備機器及び操作性の悪い機器の改善
- バリアフリー、ユニバーサルデザインの配慮
文化会館リニューアル及び文化施設運営事業の進め方
改修工事
文化会館を築後60年以降も安全に利用できるよう長寿命化改修を行います。また、新築の場合と同様に、改修後10年間は大きな修繕が不要になるような改修を行います。長寿命化改修後の対応は、施工状況や施工後の維持管理状況により異なるため、必要に応じて施設の劣化状況の調査及び点検を行い、性能水準の向上、法改正等への対応、施設需要の変化への対応を併せて行うことで、築60年以降後、更に15年~20年の利用を目標とし改修工事を行います。
改修後の施設及び設備の点検及び診断
建築基準法に基づく定期点検に加え、予防保全の考え方により、施工業者による巡視や定期点検を計画的に実施し、劣化箇所の早期発見及び対応を行います。また、点検記録や維持管理記録のシステム化により維持管理や点検記録をデータ化し、築後60年以降の利用を実現するため長期修繕計画を策定します。
予定している主な改修内容
今後、設計業務の中で、改修内容や仕様の詳細を決めていきます。
安全性の確保
![大ホール](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/daihole.jpg)
イメージ図 大ホール
![小ホール](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/small.jpg)
イメージ図 小ホール
- ホールの特定天井(吊天井)の改修
- 雨天時に滑りやすいタイルの改修
- 消防・排煙・消火設備類の更新
- 感染症対応のため空調設備の換気能力の向上
長寿命化対策
![点検](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/tennkenn.jpg)
イメージ図 点検
屋上は耐久性の高い防水シートにより防水対策を全面実施
外壁の全面調査を行い落下防止対策を実施
コンクリートの中性化試験及び中性化対策を実施
耐久性、防汚性に優れた素材の採用
電気、水道、ガス管類のライフラインの更新
点検、調査結果に基づく長期修繕計画の策定
公演中止のリスク回避及び維持管理コストの縮減
- 老朽化が著しい舞台設備(舞台機構・音響・照明)、電気設備、空調設備の更新
- 各部屋の利用特性に応じた照明器具のLED化
- 照明は利用頻度に応じた人感センサーを設置
- 空調機器の高効率型への更新
ユニバーサルデザインの配慮
![イメージ図 キッズスペース 授乳室](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/kids.jpg)
イメージ図 キッズスペース・授乳室
大きく見やすい案内板への更新
障がい者用トイレの改修
楽屋トイレに障がい者用トイレの新設
キッズスペース及び授乳室の新設
大ホール客席の車椅子席の増設
主要な各棟への出入口の自動扉化
要所への手すりの設置
快適性の向上
![楽屋](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/gakuya.png)
イメージ図 楽屋
![展示室](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/tenzi.jpg)
イメージ図 展示棟ホール
- ホールの座席幅の拡張及び更新
- ホール座席に着脱可能なチャイルドシートの導入
- 大ホール3階ホワイエに女子トイレの増設
- 舞台の演奏に適した椅子への更新
- 楽屋内レイアウトを変更し利便性を向上
- 展示棟ホール部のラウンジ化による滞在スペースへのレイアウト変更
- 展示室のピクチャーレールの更新
- 展示室の間仕切り壁やライティングレール設置
- 移動性を考慮したホワイトボードへの更新
- 会議室206の防音設備の改修により、楽器練習や声楽等の利用に対応
- Wi-Fi、デジタルサイネージ、ホールへ光回線の導入
- 小ホール上手袖の動線を確保し安全性、利便性を向上
- オンラインサービス、キャッシュレスサービスの導入
- 託児サービス(有料)の実施
ホールの音響対策
![小ホール](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/small.jpg)
イメージ図 小ホール
客席背面、座裏を木製とし残響音を向上
ホール天井の石膏ボード数を増し反射性を向上
小ホール側壁に吸音、反射パネルを設置し、ホールの構造上発生する音響障害(フラッターエコー)を軽減
改修を選択した理由
建物は長寿命化対策を行い改修することで安全に利用でき、建替えとの費用比較から約半分、実質的な負担額を抑えられます。また、建替えに関連する資材費や人件費の上昇率等により、更に建替え費用が増える懸念があることから、社会情勢や経済情勢を踏まえ、コストの発生を抑えた整備を行うことが財政負担の軽減に結び付くと判断し、改修工事を行こととしました。
耐震診断、施設劣化調査により安全性が確認できたため
平成23年度に「文化会館耐震診断業務委託」において耐震診断、令和2年度に「佐野市文化会館施設劣化調査及びPFI導入可能性調査業務委託」においてコンクリートの圧縮強度の測定、中性化試験、外壁の打音調査を行いました。各調査結果におきまして、修繕は必要ですがコンクリート躯体について安全性が確認できたため、改修を行い長寿命化を図り築60年以上利用できる施設とします。
調査結果概要
耐震診断
構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性の評価結果は基準を満たすもので、各棟、各階とも耐震性は充分又は満足している判定結果となりました。
コンクリートの圧縮強度
コンクリートのコア抜き調査を行い、コンクリートの圧縮強度は全体的に設計基準強度より高い結果となり、コンクリート躯体強度は良好でした。
中性化深さ試験
平成23年と令和2年に調査を行っております。平成23年の調査結果から令和2年までの中性化進行速度で計算したところ、早いところで鉄筋まで到達するのは令和35年頃との結果となりました。文化会館は外壁、内壁とも厚みのあるレンガで覆われており、二酸化炭素の影響は受けにくい構造になっています。コンクリートの中性化は見られるものの、鉄筋を腐食させる水分、空気、電位差等が侵入しない限り重大中性化リスクは低いと考えられます。
対策として改修工事前に中性化深さ試験を再度行い、結果に応じた中性化対策を行い建物の耐久性を維持します。
外壁打音調査
外壁に浮き判定は程度により重度(欠落等)、中度(ひび)、軽度(浮き)の判定がされますが、一部重度、中度は見られるものの大部分は軽度判定で、適切なレンガタイルの補修により対策が可能です。
対策として 重度中度判定部は、下地調整を行いレンガタイルの張替、軽度部は専用のピン及び接着樹脂を用いた工法により固定化を図ります。
長寿命化事業の活用
本事業では、地方債である公共施設等適正管理推進事業債の長寿命化事業を活用します。法定耐用年数を超えて公共用の建築物を使用するために行う改修事業が対象で、後年度の元利償還金に対して、財政力に応じて30%~50%が交付税措置されます。
事業対象期間 令和8年度まで
長寿命化事業を活用し、改修工事を行った場合の市の財政負担額
建替えと比べ、約42億円の負担縮減
設計・改修工事費等約57億2千万円のうち、市債とて、約41億9千万円の借入を見込むと、後年度の元利償還金に対して、直近の令和4年度と同程度の交付税措置率34%で計算した場合、償還元金に対して、約14億2千万円の交付税措置が見込まれます。
その結果、利子を考慮しない実質的な負担額は約43億円となります。対して単に文化会館を建替えた場合、負担額は約85億円の見込みです。なお、建替費用は他自治体の実例から試算した概算値です。
施設の長寿命化への対応
計画的な点検の実施
建築基準法に規定する法定点検に加え、施設管理者・建設企業による日常・定期点検、巡視点検、劣化調査を計画的実施し施設の状態を把握し、設備の機能保持を図ります。
点検結果等のデータの一元管理及び長期修繕計画の策定
設計・改修時の設備のデータ、各種点検結果、設備稼働データ、エネルギーデータ、モニリングデータなどのデータを一元管理し、築後60年以上の利用を見据えた長期修繕計画の策定を行います。
集約化・複合化事業の検討について
集約化・複合化事業 充当率90%、交付税措置率50%
公共施設等適正管理推進事業債における集約化・複合化事業を活用する場合の条件
- 事業の対象期間は、令和8年度まで
- 対象となる事業費は、令和8年度中までに要した費用が対象です。
- 公用施設、公営住宅、公営企業施設等は対象外です。
- 全体として、延床面積の減少を伴うものであること。
- 公共施設と対象外施設(庁舎等)を複合化する事業については、対象施設に係る部分に限り対象になります。
- 整備前の施設にない機能を有した施設を新たに追加して併設する場合、当該追加部分の施設については対象外となります。
- 集約化または複合化による統合前の施設の廃止が、集約化または複合化による統合後の施設の供用開始から5年以内に行われるものが対象になります。(施設の廃止とは、単に機能を廃止する用途廃止ではなく、除却、転用や他の団体・民間等へ売却等により、従前の公共施設を直ちに供用することができない状態にすることです。)
例えば、公民館を統合した場合、今まで利用していた公民館を解体するか、民間に売却することになります。
集約化・複合化事業の課題
- 複合化により、施設を新設する場合、設置場所や新しい施設の規模やレイアウト、設備などの整備構想・計画を策定するまでに、ある程度の期間を要します。
- 建替えの場合、各種法令に関係する事前の相談や、申請及び許認可に時間を要します。
- 事業の対象期間が令和8年度までであるため、新たに集約化・複合化により、建物を建て直す場合、工事着工までにある程度の期間を要することが想定されます。工期が令和8年度以降に及ぶ計画となる場合、令和8年度以降の計画にかかる事業は公共施設等適正管理推進事業債の対象外になり、市の財政負担額の縮減効果も限定的になってしまいます。
- 集約化・複合化することで、施設の維持管理費が削減されますが、今まで利用されてきた周辺の市民の方の利便性が失われることが想定されます。
「今まで近くにあったが、文化会館まで行かなければならない」、「文化会館と複合化することで、利用者が重複し予約が取りづらくなる」などサービスの質の低下の恐れがあります。
また、あくとプラザのように平成10年築と耐用年数が十分ある施設や、利用率が高い施設は、現在の用途として利用する価値があり、市民サービスの維持に必要な施設です。
検討結果
佐野市人口の将来展望では令和22年(2040年)には10万人を割るとされており、2045年には95,130人まで減少すると推計されております。集約化・複合化については、拙速に集約化・複合化するのではなく、佐野市市有施設適正配置計画における施設の位置付け、施設の立地条件や劣化状況、市の人口の変化に伴う利用状況や市民ニーズの変化を正確に把握したうえで、今後、時期を見極め検討したいと考えております。よって、現時点では、集約化・複合化に該当する施設は無く、文化会館単独での改修としました。
建替えについての検証
建替えでも、将来、大規模な改修が必要
建替えとの比較検討では、建替えにより全て新しくなることで修繕リスクは軽減されますが、機能回復のための中規模修繕や40年後、60年後には各設備の更新時期や施設の経年劣化が生じるため機能回復のための大規模改修、社会情勢の変化やニーズ、多様化による要求水準の変化に対応するための機能向上、更新などが必要となる時期を迎え、同程度の改修費用等の発生が見込まれます。
現文化会館の建設費は当時で約22億円、今回の改修予定額は約57億円です。建替えとなった場合、他自治体の発注状況から算出すると現文化会館と同規模の建替えを行った場合、仕様にもよりますが概算額で約70~85億円程の費用が見込まれます。
また、建設資材の物価指数も新型コロナウイルスの発生以降、上昇傾向がみられ、特に新築工事に必要な鉄筋、鉄骨、生コンクリート、板ガラス等は高い上昇率を示しており、建替えに要する費用の高騰化が懸念されます。
更に、令和6年度には働き方改革関連法が建設業に適され、労働時間が制約されることから、人件費の上昇に繋がる恐れがあります。
建替えの場合でも、予防保全に基づく大規模な改修が必要であることから、将来の大規模改修工事費用を換算しますと、単純な額の比較ではありますが改修工事の方がコストの抑制に繋がります。
歴史的文化的資産価値の継承
人間国宝田村耕一氏作 翔鶴之図
現文化会館は、独特の風合いの窯変焼成タイルで覆われた瀟洒な建造物です。大ホールホワイエには建物との調和のとれた人間国宝田村耕一氏の陶板壁画やホール入口のイタリア具象彫刻界を代表する作家、ヴェナンツォクロチェッティ作のブロンズ像が出迎える吹き抜け空間の造形や、庭園の緑に溶け込む曲線を多用した建築デザインは、後世に受け継ぐことで歴史的、文化的資産として価値を高めるものです。
環境への配慮SDGs目標達成の具現化
![メタモール](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/meta.jpg)
イメージ図 メタモール
世界的な潮流になりつつあるSDGs。廃棄物問題などの環境問題が深刻化し、建てては壊すというスクラップアンドビルドから、廃棄物の放出を大幅に減らし、建物の所有者としての責任において、長寿命化改修の範囲で使える建物を利用することで、SDGsの目標「つくる責任つかう責任」を具現化したいと考えます。
DBO方式の採用について
本市においては、市有施設の約半数が大規模改修や建替えの時期を迎えることから、維持や更新に係る費用が増大し、大きな負担となることが予想されております。
文化会館の改修にあたり、コストを抑え優れた公共サービスの提供を実現するために、民間活力を導入した事業手法(PPP/PFI手法)の検討を行いました。
文化会館リニューアル及び文化施設運営事業につきましては、民間事業者の創意工夫やノウハウを活用し財政負担の軽減や早期の整備を図ることを目的としています。
本事業は、PFI法に準じて、民間事業者が文化会館の設計、工事監理、改修工事、総括管理、維持管理、運営業務及び葛生あくとプラザの総括管理、維持管理、運営業務を一括して行い、施設の所有、資金調達に関しては市が行う「DBO(Design Build Operate)方式」により実施します。
PPP/PFI手法導入の検討経緯
公共施設の整備等に当たり、民間の創意工夫やノウハウを生かすことにより、機能的な改修やサービスの向上、コストの縮減を図るため、PPP/PFI 手法の導入について幅広く検討することが求められています。
事業手法の検討
事業手法については、「多様な PPP/PFI 手法導入を優先的に検討するための指針」(内閣府・総務省通知)、「佐野市PPP/PFI手法導入優先的検討方針」に基づき、従来手法 、PFI手法、DBO手法でリニューアル事業を行った場合の導入効果について比較検討を行いました。調査の第一段階では「簡易な検討」、第二段階で「詳細な検討」を行いました。
「簡易な検討」
令和元年度に、佐野市文化会館の改修に係るPFI等導入検討調査によりPFI導入の適合性の検討を行い、適合性があることを確認しました。
「詳細な検討」
令和2年度に、佐野市文化会館施設劣化調査及びPPP/PFIの導入可能性調査を行いました。劣化調査により改修が必要な箇所の現場確認、長期の修繕計画の作成、民間事業者の意向調査を行い、コストの縮減効果や有効で効率的なサービスの提供が期待できるか比較検討を行い、導入効果があることを確認しました。
検討した事業手法
従来方式
公共施設の設計、建設工事、維持管理、運営を業務ごとに個別に発注する方式
RO(Rehabilitate Operate)方式
PFI方式のひとつで、既存施設の改修を行う方式です。
民間の資金と経営能力、技術力、ノウハウを活用し、公共施設等の設計、改修、維持管理、運営を行う公共事業の手法です。あくまで市が発注者となり、公共事業として行うものです。
設計、施工、維持管理、運営を一括発注するため、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力の活用により、従来方式と比較し、事業の効率化、事業費の低減、サービスの水準の向上が期待されます。
民間事業者は、自ら調達した資金により施設を設計・改修し、維持管理及び運営を行いますが、市は、その業務に対して対価を支払うことになります。サービス購入型といわれます。
DBO(Design Build Operate)方式
RO方式(PFI)同様に、設計・施工、維持管理、運営を一括発注するため、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力の活用により、従来方式と比較し、事業の効率化、事業費の低減、サービス水準の向上が期待できます。
資金の調達を市が行う点がRO方式(PFI)と異なり、PFI方式に準じた方式です。
事業手法 | 従来方式 | RO方式 | DBO方式 |
---|---|---|---|
設計 | 市 | 民間 | 民間 |
施行改修 | 市 | ||
維持管理 | 市 | ||
運営 | 市 | ||
発注形態 |
仕様発注 分離分割発注 |
性能発注 一括発注 |
性能発注 一括発注 |
契約形態 |
設計施工請負契約 維持管理委託契約 |
包括 |
設計施工一括契約 指定管理協定 |
仕様発注とは、施設の配置、構造、建築材料等、業務に関わる詳細な要件等の仕様書を市が作成し、民間に提示して発注すること。
性能発注とは、必要な施設の性能要件や業務水準のみを提示して、その性能、水準を満たすための詳細な方法や設計は問わずに、民間の裁量により市の要求水準を満たす施設を整備させること。
その他の検討項目
PFI方式の事業類型には、サービス購入型の他、独立採算型があります。
独立採算型とは、市が民間事業者へお金を支払わず、利用者から徴収する料金収入によって民間事業者が事業費を賄う方式です。
利用者の増減によりPFI事業者の収入が影響を受ける等、 PFI事業者が長期にわたり大きな事業リスクを負担することになります。
令和3年2月のPFI導入可能性調査と並行し実施した、民間企業を対象とする「民間活力導入に関するアンケ―ト調査」では、「公共的行事や減免規程のある施設では採算性が低く導入は難しい。」、「立地が良く、将来にわたり収益性や発展性、継続性が高いと判断される案件でないと参画することは難しい。」などの否定的な意見が多くありました。よって、本事業を進めるうえでの弊害となりかねないため独立採算型の採用は見送り、一般的な事業類型であるサービス購入型を採用しました。
事業手法の比較検討
事業手法の選択に際し、RO方式又はDBO方式として実施することにより、公共サービスの水準の向上を期待できること及び事業期間を通じて市の財政負担の縮減を期待できることを基準に比較検討を行いました。
具体的な検討項目
市の財政負担見込み額による評価
市が直接実施する場合とRO方式及びDBO方式で実施する場合の事業費を算定し、比較すると次の表のとおりとなります。
その結果、市が直接実施する場合に比べ、DBO方式で実施する場合の数値が7.74%となり、RO方式より財政負担の縮減効果が高い結果となりました。
値(割合) | VFM (縮減効果の割合) | |
---|---|---|
市が直接実施する場合(従来方式) | 100% | - |
RO方式(PFI) | 97.85% | 2.15% |
DBO方式(PPP) | 92.26% | 7.74% |
VFMとは、PFI事業におけるもっとも重要な概念の一つです。支払(Value)に対して最も価値の高いサービス(Money)を供給するという考え方です。
VFMの評価は、市が従来どおり公共事業を実施した場合(PSC)の事業期間全体を通じた総事業費とPFI事業として実施した場合(LCC)の事業期間全体を通じた総事業費との比較により行います。
なお、PSCとPFI事業のLCCは、割引率を用いた現在価値換算後の値を使用します。事業手法を検討する際の判断基準となり、数値が高い方が縮減効果があります。
現在価値換算とは、将来の価値(コストや収入等)を現在の価値に換算することです。例えば、金利が5%の場合、現時点の100円は1年後の105円と同じ価値になります。このため、10年後の1億円が現時点での何円に相当するかという換算を行います。
VFMを算出する計算式で算出した総事業費の比較結果
従来方式 | RO方式 |
DBO方式 |
---|---|---|
約74.2億円 |
約72.6億円 | 約68.4億円 |
RO方式(PFI) | DBO方式(PPP) |
---|---|
約1億6千万の縮減 | 約5億7千万の縮減 |
結果、DBO方式が財政負担の縮減効果が高いことが確認できました。
RO方式又はDBO方式として実施した場合の効果
公共サービスの向上
RO方式、DBO方式のいずれも、施設運営に民間事業者が有する専門的な知識やノウハウを活用することにより、施設の利用者等のニーズ及びその変化に対応した良質で多様なサービスを柔軟に提供することが期待できます。
リスク分担の明確化
RO方式、DBO方式のいずれも、事業開始前からリスク分担を明確化することにより、問題発生時における適切かつ迅速な対応が可能になり、業務目的の円滑な遂行や安定した運営の確保が期待できます。また適正なリスク管理により、過度な費用負担を抑制することが可能となります。
RO方式の場合、民間が資金調達をするため、財務状況を確認する金融機関のモニタリングが行われます。
上記の評価に基づく総合的評価
RO方式、DBO方式のいずれも、従来方式と比べて設計、改修工事から維持管理運営までを一体的に発注するため、設計段階から運営を視野に入れた効果的な整備が期待できるとともに、民間活力が十分に生かされ、サービス水準の向上が見込めます。
また、事業費においては、DBO方式では7.74%の財政負担額の縮減が期待できる結果となり、RO方式より縮減効果が高い数値となりました。
以上のことから、佐野市PPP/PFI手法導入優先的検討方針に沿い、佐野市文化会館リニューアル及び文化施設運営事業の事業方式に、DBO方式を選定しました。
![ロビー](https://www.city.sano.lg.jp/material/images/group/50/robi.jpg)
イメージ図 大ホールホワイエ
本市の文化芸術のシンボルである文化会館が、安全で快適な施設として末永く市民の皆様に親しんでいただけるよう、本事業を進めてまいります。
ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
からの記事と詳細 ( 佐野市文化会館大規模改修工事のお知らせ/佐野市 - 佐野市 )
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