【夏の怪談特集】新生活や転勤などで新居を決める際、何が決め手になるだろうか。家賃、間取り、日当たり、アクセス。良い条件の物件に住みたいのは誰もが同じだ。しかし、もし条件の良い部屋が見つかっても、それが事故物件や幽霊が出る物件だったら?
曽祖母、祖母、父と代々霊感の強い家系に生まれたが、自分は「まぁそこそこレベル」で、父がとんでもなく強い。筆者は4回ほど住処を変えており、こういう体質なので4回とも「変な物件」ではないかどうかチェックはした。
うち最初の2回は物件巡りに父も同行してもらってダブルチェックしている。住んだ賃貸物件に恐ろしいものがいたということはないが、今回は父と物件巡りをした時の体験と、筆者が友人から相談された時の話をお届けする。(文:コティマム)
灰色のどんよりした空気を一帯に漂わせる部屋
大学卒業後、東京で働くことになった。新居を決めるべく父と上京して物件巡りをし、最終的に都内の物件に決めたのだが、それまでは知人の勧めで都内寄りの神奈川県の物件を探していた。
その中で、1つだけ今も忘れられないマンションがある。14年も前のことなので詳細は曖昧だが、東横線沿いで、5階建てくらいのしっかりとした造りのマンションだった。マンション前に到着した時点では特に何も感じなかった。
不動産屋の案内で父とエレベーターに乗り、確か3階だったと思う。扉が開いてフロアに降り立った時、なんとも言えない、どんよりとした、重たい空気が外廊下一帯を包んでいた。外廊下なので、廊下自体は外光も当たり明るいが、体全体が重たくなる“何か”があった。
不動産屋は、エレベーターを降りてすぐの右斜め前にある部屋に案内し、「ここは日当たりがいいですよ」と言いながら鍵を開けようとしていた。その時、筆者と父は目が合い、「このマンションはないね」と心の中で通じ合っていた。
直感で思ったのは「これから見ようとしている部屋には特に問題はない」ということだった。しかし、その部屋の2つ隣にある、突き当たりの奥の部屋がまずかった。灰色っぽい重たい空気が、廊下にまで充満していた。
紹介された部屋は、実際に日当たりもよく、嫌な感じはしなかった。しかし部屋から出て廊下に出ると、いきなり重たい空気に包まれ、どうにも突き当たりの部屋が気になってしまう。
不動産屋と別れた後、父も「あの部屋自体は問題なかったけど、奥の突き当たりの部屋がやばいな」と同意見だった。
「奥の部屋そのものが問題なのか、あの部屋の住人に何かが憑いているのかはわからないけど、“ああいうもの”が近くにいる所には住まない方がいい」
と言われた。
見たこともない友人の部屋が“見えた”瞬間…
これは友人が一時期住んでいた賃貸物件の話。筆者と共に都内で働いていた男友達が、転職を機に高知県に住むことになった。高知市内で新たに一人暮らし用の部屋を借りて住み始めた彼から、しばらくして夜中に電話があった。
そこで「そういえば最近ちょっと変。寝られん」と相談された。新しい環境に慣れるためがむしゃらに働いていたので、疲れもあるのだろうと思ったが、「金縛りみたいになる」という。当初は疲れすぎて体が動かないだけかと思ったが、
「寝てると明け方少し前くらいに、胸から頭がズシッと重くなって、体が動かせない。頭側にドアがあるんだけど、なんかそっちに気配がして……でも声も出せんし、動かせん。たいていそのまま気絶して朝になってる」
と言うのだ。電話越しにそう聞いた途端、腕の産毛が逆立って鳥肌が立ち、目にじわっと涙が溜まった。これは筆者が“すごく嫌なもの”を見たり感じたりする時になる現象で、彼の話が嘘ではないとわかった。
と同時に、目の前に「彼の部屋の映像」が浮かんできた。彼の部屋を見たことも、写真を送ってもらったこともない。しかしハッキリと1Kの部屋が見えた。
筆者の視点からは、目の前にベッドがあったのだが下が収納になっていて、寝床に階段で登るタイプのものだ。ベッドの右側にはドアがあり、おそらくそれはキッチンに繋がっているのだろう。
部屋の構造やベッドのタイプを筆者が確認すると、まさにその通り。「なんでわかるんや!」と驚く彼だが、一点伝えようか迷ったことがある。ベッドの上に、黒い甲冑を着て、左側に刀を差している人のようなものが座っていることだ。
そこを中心に部屋全体に黒い靄がかかっていた。「まずいものが見えてしまった」と思ったが、彼は筆者の霊感を知っていいるので、正直に伝えた。彼は絶句した後、「怖いこと言うなや!」と取り乱したが、「でもお前が言うなら本当だと思う」とすぐに彼は引っ越した。
家や場所をテーマにしたホラー映画で「呪怨」や「残穢」がある。あそこまでショッキングではなくとも、建物に何かが残ったり、漂っていたりすることはあると思う。物件選びの際、「なんか落ち着かない」「ザワザワする」と感じた物件は選ばない方がいいかもしれない。
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