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Monday, April 10, 2023

「重力レンズ」を手がかりに、太陽の300億倍の超大質量ブラック ... - Business Insider Japan

ブラックホールの想像図。観測史上最大級のブラックホールが発見された。この超大質量ブラックホールは、背後にある銀河からの光を歪めてしまうほど強力な重力がある。

ブラックホールの想像図。観測史上最大級のブラックホールが発見された。この超大質量ブラックホールは、背後にある銀河からの光を歪めてしまうほど強力な重力がある。

ESA/Hubble, Digitized Sky Survey, Nick Risinger (skysurvey.org), N. Bartmann

  • 遠い宇宙で超大質量ブラックホールが発見された。
  • このブラックホールは太陽の300億倍の質量だと推定されている。
  • これは、今までに発見されたブラックホールの中でも最大級の大きさだ。

何億光年も彼方の宇宙深部から、太陽の質量の300億倍もの超大質量ブラックホールが発見された。

2023年3月29日付で「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された研究論文によると、このブラックホールは今までに発見された中で最大級である可能性があるという。

論文の筆頭著者で、英ダラム大学物理学科の研究者であるジェームズ・ナイチンゲール(James Nightingale)は「天文学者でも、この大きさを理解するのは難しい」とBBC Radio Newcastleに語っている。

ブラックホールは物理学的にこれ以上大きくなれないと考えられていることから、このブラックホールは観測史上最大級のブラックホールであり続けるかもしれないとナイチンゲールは言う。

「このブラックホールは、太陽の質量のおよそ300億倍、今までに発見された中で最大級のもので、ブラックホールの大きさの理論的な上限にある。非常にエキサイティングな発見だ」と、彼はプレスリリースで述べている。

レンズの役割を果たしたブラックホール

ハッブル望遠鏡(左)とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(右)で撮影された画像。いずれもある銀河がその背後の銀河からの光を歪ませる重力レンズ効果を示している。

ハッブル望遠鏡(左)とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(右)で撮影された画像。いずれもある銀河がその背後の銀河からの光を歪ませる重力レンズ効果を示している。

NASA/STScI; NASA/ESA/CSA/STScI

ブラックホールの大きさを調べるために、研究チームは「重力レンズ効果」という現象を観測した。

銀河のような超巨大天体は、光を曲げてしまうほど強い重力を持つことがある。

ある銀河の(地球から見て)手前にもうひとつの銀河がある場合、手前の銀河が奥の銀河から放射された光を歪めることがあり、これを重力レンズ効果という。奥の銀河からの光は増幅したり、変形したりして地球の観測者のもとに届く。

だが、ナイチンゲールらは奥の銀河を研究したいわけではなかった。その手前の銀河の中心にあるブラックホールがどの程度の大きさであれば、このような現象を引き起こすのかを明らかにするために重力レンズ効果を観測したのだ。

研究チームはハッブル宇宙望遠鏡が撮影した遠方の銀河の画像を観測する中で、この重力レンズ効果を生み出す銀河を発見した。下の図では、右にある銀河からの光が、黄色い円で示された銀河を通過する際に重力レンズ効果を受けて歪む様子を示している。それをハッブル宇宙望遠鏡が捉えた画像が左の四角に示されている。中央の明るい点が手前の銀河で、その下のかすったような光と、右上のアーチ状のラインが奥の銀河からの光だ。

ハッブル宇宙望遠鏡が重力レンズ効果を捉えた様子。

ハッブル宇宙望遠鏡が重力レンズ効果を捉えた様子。

Durham University

研究チームが着目したのは、このかすったような光の形だった。これは手前の銀河のブラックホール近くを通過した光であり、どの程度の質量のブラックホールであれば画像に写し出されたような形を作り出すことができるかについて、コンピューターでシミュレーションを行った。その結果、このブラックホールの質量が、太陽の300億倍であることが明らかになった。下の動画でシミュレーションの様子を見ることができる。

この手法で「不活発」なブラックホールも検出が可能に

このブラックホールの発見は、宇宙論の限界を押し広げるものだとナイチンゲールはBBCに語っている。

宇宙の誕生からわずか130億年の間に、これほど大きなブラックホールをどうやって形成したのだろうか」

研究チームは、今回用いた手法で他にも何ができるのではないかと考えている。

「これまでに知られている最大級のブラックホールのほとんどは活発な状態にあり、そこに引き寄せられた物質は加熱され、光やX線、その他の放射線の形でエネルギーを放出する(これによって観測が可能になる)」とナイチンゲールはプレスリリースで述べている。

「一方、遠方銀河にある不活発なブラックホールを観測することは、これまでほぼ不可能だったが、重力レンズ効果を利用すれば可能になる。この手法によって、地球近傍を超えた遠方にあるブラックホールを検出し、はるか過去にさかのぼってこれらの未知の天体がどのように進化したのかを明らかにできる可能性がある」

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