早ければ年内に増産体制に入りたい自動車生産に、今までとは異なる足かせ要因が出てきた。重要保安部品などに使われるアルミダイカスト製品が年明け以降、品不足に陥る可能性が出てきたためだ。中国の電力不足で、高いシェアを占める同国産金属シリコンの供給が急減。軽圧、アルミ二次合金地金メーカーの操業に影響するとの見方が、ユーザー周辺からも台頭してきた。自動車の生産減は、鋼板コイルや特殊鋼鋼材、鋼管などの需給動向にも直結するため動向を注視する必要はあるが、自動車の潜在需要は依然底堅く、生産減は鉄スクラップの発生減要因ともなるため、自動車生産の動きと鋼材市況が同調する環境とはいえない。逆に、鉄スクラップ不足が電炉製品や特殊鋼などには値上げ要因となる。今までにない局面に関係筋の多くは情報収集や事実確認を急いでいる。 国内の自動車生産は足元、計画比で3割以上のマイナスになっている。自動車向け比率の高い東海地区などでは、トヨタをはじめホンダ、スズキなどが軒並み生産減となっている中で、鋼板コイルなどでは現物在庫の滞留が悩みの種の一つともなっており、鉄鋼メーカー、商社、コイルセンターなどが調整に苦慮している。 自動車の需要自体は、底堅く推移しており、足元の減産分もほぼ購入者が決まっている。自動車メーカーとしてはできるだけ早く挽回生産に向かいたいところだ。最大手のトヨタ自動車の場合、12月の完成車生産を現状比で日当たり1千台以上上乗せするほか、1～3月生産を同1万6千台弱まで引き上げる方向で調整している。上乗せが実現すれば、現行計画比で6％程度の増産になり、年度計では当初計画比20万台程度の減にとどまりそうだ。 そうした中、半導体や電子部品の入手難に加えてアルミダイカスト製品などの先行き供給不安の情報が市場に出てきた。中国の電力不足が続けば、マグネシウムの不足も想定され、場合によっては自動車用の外板などで使用比率が高まっているアルミパネルの供給にも影響が出る可能性がある。 金属シリコン（ケイ素）は、アルミ精錬およびアルミ鋳造時の溶湯の流れを円滑にさせるため、数パーセント転嫁される副資材。世界生産の6割が中国産（その他はオーストラリア、ブラジルなど）。シリコンの精錬には大量の電力が必要となる。輸送条件の優位性などもあり、国内の軽圧・アルミ二次合金メーカーの大半が中国産金属シリコンを調達している。 自動車に近い二次合金筋では「年内に使用する金属シリコンはすでに手当て済み。しかし、年明け以降の金属シリコンの手配はこれから」とする。合金生産に見合った金属シリコンを手配できなければ、現在のところ来年早々の生産に少なからず影響を与えそうだ。 この結果、アルミダイカストメーカーの減産につながって自動車メーカーの生産回復は思ったようにレベルを上げられない可能性もある。 一方、こうした自動車生産減に伴う市況へのマイナス影響は、いまのところあまり予想されない。
からの記事と詳細 ( 中国産金属シリコンの供給不安、車向け鋼材需要回復の足かせに。車用アルミダイカスト不足懸念（鉄鋼新聞） - Yahoo!ニュース )
https://ift.tt/3BmWxlH
No comments:
Post a Comment