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Thursday, February 27, 2020

東京都「ZEV普及プログラム」に電気自動車ユーザー目線で5つの提言 - EVsmartブログ

東京都が全額補助して急速充電器を増設?

NHKのニュースによると、東京都が「不動産会社や商業施設を運営する企業の担当者らを都庁に招いて意見を交わし」、小池知事が「急速充電器の設置にあたって全額を補助する都の制度を説明したうえで、街なかの駐車場や集合住宅の駐車スペース、それに商業施設などに積極的に整備するよう協力を呼びかけ」たと報じています。

出席者からは「充電器用のスペースをどう確保するかが課題だ」といった指摘もあったとか。さらにこのニュースでは「都は(電気自動車の)普及に向けた環境整備のために急速充電器をできるだけ早く1000基以上に増設する取り組みを進める考え」であるとまとめています。

電気自動車のさらなる普及を見据えて、充電インフラ整備の加速が必要であることに依存はありません。でも、街なかや商業施設に「急速充電器」をバラバラと設置するのは、あまり効果的な方法ではありません。しかも、都が全額補助というのは、無駄なバラマキ施策になりかねない危惧を感じます。

都庁近くの公共駐車場にも急速充電器が設置されていますが、正直、あまり使いやすい施設とはいえません。(写真は2013年11月撮影)

そもそも、小池知事がどういう席でこの発言をしたのかニュースの内容ではわからないのでネット検索してみると、2月21日に東京都が『ZEV充電インフラ拡大ミーティング〜ゼロエミッションビークルの普及を事業者とともに〜』を開催。その中のやりとりであったことがわかりました。

担当部署は、地球環境エネルギー部 次世代エネルギー推進課。今までにも、EVsmartブログでは『2050年までに東京のCO2排出を実質ゼロにすると小池知事が表明、を東京都庁に聞いてみた』や『東京都の集合住宅などへの充電設備補助金【申請受付中!】』といった記事で、東京都の電気自動車の普及施策について意見をお伝えしてきています。その取材に対応していただいたのが、まさにこの次世代エネルギー推進課でした。

はたして、担当部署でも「急速充電器の整備」がことさらに重要な施策と捉えているのか。担当課長に直接電話して伺ってみました。

端的に結論としては、東京都としては急速充電器の設置促進だけに注力しようとしているのではなく、小池知事の発言は東京都が昨年末(12月27日)に策定して発表した『ゼロエミッション東京戦略』のひとつである『ZEV普及プログラム(PDFファイルにリンク)』に基づいたものである、ということでした。

【関連サイト】
『ゼロエミッション東京戦略』(東京都環境局)

東京都は、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言し、本気で具体的な施策に着手しつつあります。ZEV(Zero Emission Vehicle=排出ガスを出さない自動車)普及は、目標を実現するために不可欠なプログラムと位置付けられています。

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

明確な目標を定めた『ZEV普及プログラム』を支持したい

発表された『ZEV普及プログラム』は、2050年のゼロエミッション東京を実現するために2030年に達成すべき目標を明記。広く「都民にわかりやすく」という点に配慮してまとめられています。先にテキストリンクを貼ったPDFを、ぜひご一読ください。

2030年に向けたZEV普及の具体的な施策については、次の3つが「柱」として掲げられています。

● ZEV普及を支えるインフラの確保
● 乗用車・バス・バイクなど車両のZEV化促進
● 社会定着に向けた機運醸成

目標、そして具体的施策ともに、列記されている内容はわかりやすく、ことに2030年に「都内乗用車新車販売台数に占めるZEV割合50%」や、「小型路線バス(乗車定員30人以下程度)の新車販売は原則ZEV化」といった意欲的な目標は、EVsmartブログとしても賛同し、支持したいと感じます。

2025年に「公共用充電器5000基」を整備

充電インフラについての目標を具体的に確認してみます。まず、現状で東京都内全域の公共用充電器の数は、急速充電器が約300基、普通充電器が約2200基。また、水素ステーションが14カ所(いずれも2018年度末)とのこと。

2050年に「都内を走る自動車は全てZEV化」という環境を整備するために、次の目標を明記しています。

【2030年のインフラ整備目標】
● 急速充電器 1000基
● 水素ステーション 150カ所

【2025年のインフラ整備目標】
● 公共用充電器 5000基

つまり、2030年に急速充電器1000基はともあれ、5年後の2025年までに現状から約2800基増える5000カ所の充電インフラを整備する目標であり、そのうち500基が急速充電器だとしても、約2300カ所の普通充電器を設置するという計算になります。

たとえば、港区の東京ミッドタウン(『EVsmart』施設紹介ページ)には、125台の普通充電器が設置されています。充電器が設置されている駐車区画はエンジン車も共用。充電時間は3時間を上限として、同時に利用できる台数にも制限を設けています。

ある程度長時間滞在する商業施設などでは、設置のための初期コストも急速充電器に比べて安い普通充電器を賢明に設置する模範的な前例として、さらに広がっていくことに期待しています。商業施設の大規模な駐車場に、ミッドタウンのような普通充電器導入の事例が増えていけば、2300や5000基の充電インフラが整備されるのに、それほど時間はかからないのではないでしょうか。次第にEVの数が増えて充電の需要が高まっていく変化にも対応しやすいでしょう。

EVユーザー目線で気になる点もいくつか……

総論としては評価できるし、期待したい東京都の『ZEV普及プログラム』ですが、EVユーザーとしての実感に照らして、いくつか気になる点があります。『ZEV充電インフラ拡大ミーティング』には、自らもEVユーザーである e-Mobility Power の四ツ柳社長も出席されていたようなので指摘があったかもしれないですし、東京都のご担当者も先刻承知のことかとも思いますが、EVsmartブログからの「提言」として、列記しておきます。

急速充電器の整備は賢明に

点在する商業施設に「全額補助」で急速充電器を設置するのは、あまり賢明な施策とは思えません。コスト負担や電力のことを考慮すると、今、全国の道の駅やコンビニなどに多く設置されている、出力20〜30kW程度のいわゆる「中速充電器」が、各施設ごとに1基ずつ設置されることになっていくでしょう。

EV乗りの実感として、コンビニならまだしも、大きな施設でショッピングや食事をしていると急速充電制限時間の30分なんてあっという間に過ぎてしまいます。食事の途中で席を立ってクルマを移動して……、というのがかなり面倒。街なかの施設で「経路充電」的にまとめて充電すべきケースも稀なので、数時間、繋ぎっぱなしにしておけて、利用料金も安価(無料であればさらにありがたい)な普通充電器がたくさんあるほうがむしろ使いやすいと感じます。

また、1基しかない急速充電器を目指して辿り着いても、先に利用者がいて充電待ちになるケースが多発するのもストレスです。

一般道に急速充電設備を整備するのであれば、交通量が多く東京から周辺地区への経路となっている幹線道路沿線。あるいは、渋谷や新宿、銀座といった集客の多い繁華街へのアクセスがいい場所に、テスラスーパーチャージャーのようにある程度まとまった数の急速充電器を設置するのが賢明です。放射状の高速道路の拠点となる、用賀や八王子、三郷や川口(埼玉県ですが)あたりに、まとまった充電拠点があるのもいいかもしれません。いずれにしても、東京都がしかるべきイニシアチブをとり、計画的な公共急速充電器整備を進めることが、大切な予算を無駄にしないためにも重要だと思います。

点在する1基施設に補助金を出すよりも、十分な広さの駐車場をもつショッピングセンターやアウトレットモールに協力してもらい、東京都が設置費用を負担して150kWのCHAdeMO新規格で、「東京スーパーチャージャー」とでも呼べる施設を展開する、なんてのはどうでしょうか。

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

集合住宅駐車場には充電器設置を義務化する

私(寄本)の場合、自宅が一戸建てでガレージにはEV充電用の200Vコンセントを設置しており、普段はほとんどが自宅での基礎充電でEVを活用しています。EV普及が進まない要因として「充電インフラの不足」が指摘されていますが、EVを便利に活用するには、自宅での充電が肝。今までの記事でもしばしば書いているように「急速充電器が足りないのは高速道路のSAPAだけ」ともいえて、ことに東京都の場合、マンションなどの集合住宅に充電器を設置することが火急の課題です。

『ZEV普及プログラム』でもこの点には言及されていて、対策として集合住宅への充電器設置への補助を実施することが挙げられています。さらに求めるなら、中国や韓国のように、新築する集合住宅の駐車場には充電器設置を義務づけるなど、さらに踏み込んだ施策が実施されると効果的ではないかと思います。

水素ステーションの整備は賢明に

脱炭素モビリティとして、FCV(燃料電池車)も選択肢のひとつです。とはいえ、すでに世界の自動車メーカーが軒並み注力し始めたバッテリー式の電気自動車に比べて、広く乗用車として普及する可能性はまだまだ低いままであることは明白です。

一方で、水素ステーションの建築には億単位のコストがかかり、水素の製造や運搬、またFCVへの充填時に必要なエネルギー(つまりカーボン排出量)など、脱炭素モビリティとしての真価にも多くの課題が残っています。

実際に活用できるFCVの車種が増えていかない現状で、ガソリンスタンドの代替といった位置付けで水素ステーションの数を増やしてしまうのは、負の遺産を築くだけの無駄な投資になるのではないかと危惧します。

拠点を限定してFCVのバスやトラックなどの大型車を運行するのであればある程度効率的な仕組みになるかもしれません。やみくもに「2030年に150カ所」と数値目標を定めて突っ走るのではなく、トヨタをはじめFCVを推進するメーカーとも協議しながら、リアリティの高い計画に基づいて水素ステーションの整備を進めるのが賢明ではないかと思います。

東京都がモデルYをフリート購入、とか

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

『ZEV普及プログラム』の中で「電気自動車等(ZEV)を購入または検討したいと思う条件」についての世論調査が示されています。赤枠で示されている「購入価格が安くなる」や「購入したい車両が発売される」という点は、日本でなかなか電気自動車が普及しない最大の原因です。

テスラ車は実用的に素晴らしい自動車ですが、モデルSやXは1000万円超。モデル3でも現在ラインアップされているモデルは500万円以上なので、手頃な車種とはいえません。国産モデルで、200万円以下で買える軽の電気自動車や、SUVで500万円以下、4WDなど、手が届く価格帯に幅広い車種の選択肢が出揃うことが、2050年に全部ZEVを実現するために不可欠です。

どんな車種を市販するかはあくまでもメーカーの判断なので、自治体にできることは限られているでしょう。プログラムでは、普及を進める具体的な施策として、補助の実施や税制などの優遇策、そして都庁が率先してZEVを導入することなどが示されています。

昨年、千葉県市川市で公用車へのテスラ車導入が「高額過ぎる」と問題になりましたが、メーカー各社に対して強いメッセージを発信するのであれば、東京都はZEVしか新規に購入しないと宣言するとか、もうすぐ日本にも導入される予定のモデルYを(すでに市販されているモデル3でもいいですけど)公用車としてまとめて購入するなど、話題性の高いアクションがあるといいのに、と感じます。

機運醸成には『EVsmartブログ』も協力します!

施策展開3つの柱の3つ目に挙げられているのが「(ZEVの)社会定着に向けた機運醸成」です。NHKのニュースでさえ、「充電インフラ整備=急速充電器を増やす」と、軽い誤解というか思い込みがあるように、電気自動車について一般市民はあまり理解していない、また、エンジン車が普通に割安で買える現状では「理解する必要もない」のが実態でしょう。

充電スポット検索アプリ『EVsmart』のデベロッパであるアユダンテが『EVsmartブログ』という電気自動車情報に特化したウェブメディアを運営しているのも、まさに電気自動車への理解を広げ、EVシフトの社会的な機運を育てるため。微力ではありますが、できることがあればどしどし協力させていただきます。

ちなみに、『ZEV普及プログラム』では、「ZEV普及のための大規模イベント」の例として、「EVによる公道レース=フォーミュラE」が紹介されていました。東京でのフォーミュラE開催、ぜひ実現してください!

2014年4月、アメリカ・ロングビーチでのフォーミュラEレース風景。

(取材・文/寄本 好則)

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