高砂部屋の胃袋を支えてきた力士が角界を去る。同部屋ちゃんこ長、序ノ口の大子錦(42)が今場所限りで引退する。95年九州場所で初土俵を踏み、25年間の相撲人生。「スッキリです。裏方として頑張れました」と胸を張る。

ソップ炊きやキムチ鍋、アンコウ鍋や手羽ちりなど、高砂部屋では豊富な種類のちゃんこの味が代々受け継がれてきた。大子錦は入門当初からちゃんこ場に立つ機会が多く、伝統の味に四苦八苦しながら作り続けてきた。そして先代高砂親方(元小結富士錦)の定年に伴い、高砂部屋と現高砂親方(元大関朝潮)が興していた若松部屋の合併後の、03年ごろからちゃんこ長に就いた。一番の思い出は「昔からの味を知っている床寿さんに『今日のはうまいな』と言われたこと」。約50年間、高砂部屋の床山を務め、19年に死去した元特等床山で床寿の日向端隆寿さんにほめられたことだ。

今日まで、伝統ある高砂部屋直伝のちゃんこの味を先代から守り続けた。第2の人生は、高砂親方の後援会関係者からの紹介で、岐阜県内の会社寮で寮長を務める。ちなみに「料理はしない予定です」と“ちゃんこ長”ではない。「社員の寮と職場の送迎とか掃除とか。今の部屋の延長みたいなもの。楽しみです」と人生2度目の“長”として歩み始める。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)