秋山黄色は、YouTubeへの動画投稿をきっかけに、その才能を見出された。映像や音源のアップロードは「人に聴かせるのではなく、友達と共有する感覚」で始めたそうだが、当時の荒削りな作品からも、キラリと光る才能が滲み出ていたという。
秋山は、自身を俗に言う「引きこもり」と形容する。今でもパソコンとインターネットが居場所で、学生時代には四六時中、ゲーム実況やボーカロイド動画を眺めていた。そうした現代ならではのナードな生活と隣り合わせにある不安や焦りに着想を得たリリックは、同じ境遇にある同世代の若者たちを中毒的に魅了する。
「僕にとって、歌詞の持つ意味合いは大きいです。こういう奴がいるんだぞ、って。だから、嘘を書かず、誰も傷つけずに、リアルに。そのなかで、音楽としての均衡を大切にしています」
8月に開催された秋山黄色初の有料配信ライブ「一鬼一遊」の一幕。来年4月にはARABAKIROCK FEST.20×21」への出演が決定。
ギターリフから始まるロックチューンの「やさぐれカイドー」から、都会的でメロディアスな「猿上がりシティーポップ」まで、音楽性の広さは物心ついたころから多くの音楽に触れる機会に恵まれていたZ世代ならではだ。YouTubeを見ると海外からの評価も高く、秋山はその理由をこう考察する。
「サウンドはひと癖あったほうがいい。あと、歌モノって日本特有の文化なので、"声を楽器として捉えること"ですね。歌は音量が一番大きい部分なので、歌を立たせすぎると使える音色にも限度が出てくる。歌を歌うのか、歌を音と認識するかで、音楽の幅と奥行きは広がります」
1stアルバムは、自分の原点を示すリアルな歌詞で共感を誘った。だが、準備を進めている次のアルバムでは、未だ見ぬ秋山黄色に出会うことができそうだ。
自曲のコード進行を秋山自らが演奏して解説する『PLAY MOVIE』。
「僕は遊び感覚で音楽を作っているので、多種多様な音楽がすでに手元にあります。例えば、ファンシーなものとか。なので、2ndは少し毛色が変わるかも。1stは決して楽しく聴けるものではなかったと思うので、もう少し音楽的な面白さを感じるアルバムにしたいです」
秋山は、瞬く間にスターダムを駆け上がった。だが、順風満帆に映るこれまでの道のりとは裏腹に、葛藤も少なくなかった。そんな孤独なロックシンガーに、今後のキャリアをどう見据えているのかを尋ねてみた。
「最近、自分を突き詰めるあまり、NOを出す機会が増え、完成まで辿り着けないことが多くなりました。そこで一瞬、自分がアーティストとして表現できる最大値が見えた気がして。具体的には、30代後半ぐらいなのかな。アーティストってある意味、キャラクターのようなものなんですよ。だから、今後は僕が思い描く僕の未来像に追いつくための努力をしたいです。音楽を楽しく続けながら、音楽以外のところにも目を向けて、もっと愉快で味のある人間になる。人としての成長と音楽性が比例すれば、たとえカタチが変わったとしても、刺さる人には刺さる楽曲が制作できると思うので」
今年3月リリースの『From DROPOUT』。10月31日(土)23時放送開始のテレビ朝日系 土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』の主題歌"サーチライト"が、11月13日(金)に配信シングルとしてリリース。
PROFILE
秋山黄色
1996年3月11日生まれ。ネット上で楽曲を発表し、キャリアをスタート。2018年、「やさぐれカイドー」でSpotifyの国内バイラルチャートで2位を獲得。2020年1月スタートのTVドラマ「10の秘密」の主題歌に抜擢。
Edit marble studio
からの記事と詳細 ( 秋山黄色──宅録部屋からオーバーグラウンドへ - GQ JAPAN )
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