
5月の男子メジャー、全米プロゴルフ選手権の2021年の会場、キアワアイランド・オーシャンコースは米国南東部サウスカロライナ州の海岸線にある。 【画像】松山英樹&石川遼のサンバイザー姿、レジェンド“AON”との貴重写真を見る! 4月のマスターズの会場、ジョージア州オーガスタナショナルGCからは東に直線距離で200kmほど。 だが、目下のメジャーチャンピオンはこの間、少々遠回りをして次なるメジャートーナメントに臨むことになった。 松山英樹はマスターズの翌日、グリーンジャケットを一度オーガスタから日本に持ち帰り、新型コロナ禍での自主隔離期間も含め約4週間のオフを過ごした。再渡米したのは5月上旬。自宅のあるフロリダ・オーランドで眠っていた身体と感覚を叩き起こし、翌週テキサス・ダラス近郊でのAT&TバイロンネルソンでPGAツアーに復帰した。 それが先週のことである。 ゴルフは怖い。AT&Tバイロンネルソンを39位で終えた松山は、「4日経って、何も良いところがない。今の自分の状態というか実力」と憮然として振り返った。ロースコアの争いになった戦いで、一番の好材料に挙げたのは予選ラウンドをカットライン上で何とか通過し、72ホールを回り切ったという最低限の結果だった。
「反省点が思い浮かばなかった」
高校生だった2008年に初めて出場したプロツアー。日本でアマチュア時代の1勝も含めて8勝、米ツアーではマスターズに勝つまでに5勝を挙げてきた。 オーガスタでの激闘とこれまでの優勝との違いは、「試合の後に反省点が思い浮かばなかったこと」だと松山は言う。文句の付けようのない、ショットもパットもすべて完璧……という内容だったから、というワケではない。 「日本に帰って(新型コロナ禍での)2週間の隔離があっても、今まではクラブを触ったりしていたが、今回はまったくそういう気持ちにもならなかった。いつもだったら優勝しても反省というか、あそこをこうしておけばよかったと色々出てくるが、まったく思い浮かばなかった」 ゴルフに関しては鉄の意志で厳しく自分に接していた松山も、キャリア最高の目標を達成してついに自賛した。 「今までになかった新たな感情。全力を出し切った、と。クラブを握りたいと思うまで休もう」 周囲からは、やれメジャー2勝目だ、グランドスラムだ、とさらに期待をかけられ、確かにそれが自分の次のターゲットになることも想像してはいたが、ハートに再び火が付くまでには少し時間がかかることも覚悟していた。 負けて反省、勝っても反省。学生時代からそうゴルフと、競技と向き合ってきたが、今回ばかりは違った。それがマスターズ、メジャー制覇の余韻だった。
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