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Thursday, April 20, 2023

ゲームやメタバースが地球を救う!? 10歳の環境活動家とAIの専門家が、気候変動対策について対談 - VOGUE JAPAN

ハリソン フードロス対策にも反映できそうな技術ですね。

 食産業も同じように需要予測をして食べ物をつくったりしています。また、ダイナミック・プライス・オプティマイゼーション(価格設定の動的最適化)の技術を活用すれば、売れ残りそうなものに対して値段を調整することで、フードロスを減らすことに繋がります。実際にWaste Lessという会社は、スーパー向けのAIを提供していて、こうした技術は劇的に効果があり、無駄が3分の1に減ることがわかっています。日本でも、スシローやベイシアは需要予測を導入していて、スシローはフードウェイストが4分の1なったと発表をしています。しかしまだ、この技術を導入していないスーパーやコンビニ、レストランなどがいっぱいあるので、ITリテラシーを高めて取り入れていけたら、もっと無駄はなくなっていくはずです。

ハリソン 1.5度目標を達成するために、森さんはAIを使ったどんな取り組みに注目されていますか?

 私は今、デジタルツインに注目しています。わかりやすくいうと、デジタルツインはマインクラフトのような世界で、ミラーワールドとも言われています。例えばハリソンくんがリアルな学校で授業を受けているとすると、同じ光景をデジタル上でも見れる感じ。その技術を、エネルギーを効率的に使うことにも活用できるんです。

例えば、車メーカーのBMWは、工場での設備やロボット、働いている人をセンシングし、コンピューター上にそれを再現し、デジタルツインで工場をシミュレーションすることで、作業を効率化したり、安全に働ける環境などを検証したりしています。実際に働いている人たちが同時にデジタルツインにアクセスしていて、部品や車など、細かいディテールまでを計算して動かすことができ、ベストな生産ラインを確認したり、エネルギーの無駄を減らすためにデジタル上で先に試したりして、その結果を踏まえて実際の工場を変えていくことができるんです。

ハリソン すごい面白いですね。

メタバース空間の森が、日本の森を豊かに

 さらには、地球そのものをデジタルツインで再現して、気候変動の影響を予測して対策を立てていこうとしている「EARTH2」というプロジェクトもあります。気候変動を予測するだけでなく、実際にこの上でシミュレーションを細かく行うことで、ネットゼロは実現できるのか、何年後に1.5度に到達してしまうことになるのか、巨大台風の発生率はどうなるのか、どんなダメージが起こるのかなどをシミュレーションできるのです。AIとデジタルツインが組み合わさることで、もっと気候変動に対していろいろなアクションがとれるようになるんじゃないかなと思っています。

ハリソンくんはマインクラフトやロブロックスなどはやっていますか? チャットGPTやミッドジャーニーなど、今の子どもたちにとってメタバースはどんどん身近な存在になっていますよね。

ハリソン まだプランの段階ですけど、森を作るためにテクノロジーを使いたいと思っています。もともとは僕が作った絵本『地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること』(KADOKAWA)の売り上げで森を買いたいなと思ったところから始まったんですけど、子どもたちと一緒に育つ森を作りたいんです。例えば、毎年決まった日に森を撮影し、それをVRに入れて植物の成長を記録したり、生物多様性が上がってくるのをメタバースの世界で見たりしたい。

 とても面白く最先端なトピックですね。ゲームやメタバースのいいところは、体験できること。木を植えたらどんないいことが起こるか、自分たちのライフスタイルがどう変わるのかなどを知ることができる。この気候変動に対しても、このままいったときの地球と、アクションをとったときの地球をメタバース上で体験すると、それをリアルな未来として受け取ることができる。そうすると、やはり未来を変えていかなきゃと思う。そういう意味でも、メタバースやオンラインゲームの世界は重要なテクノロジーだと感じます。

ハリソン 今『ポケットモンスター』のイラストレーターと、漫画やゲームを作ろうかとしていて、そのゲームの中に僕が作ろうとしているリアルな森をバーチャルで再現した「ジョージの森」を作ろうかと考えています。リアルとバーチャルを繋げることで、“Play to Earn(遊んで稼ぐ)”“Play to Contribute(遊んで貢献する)”と言われるように、世界中の人が僕の森を訪れることで得られた利益を日本の森の再生や保全に還元できたらと考えています。

 とても素晴らしいと思います。気候変動対策に危機感を感じ、心配なことも多々ありますが、これだけAIを当たり前に捉えているハリソンくんら次世代がもつ無限の可能性に希望を感じます。

PROFILE
ジョージ・Y・ハリソン(George Y. Harrison) 2012年5月26日、シンガポール生まれ。父は英国人、母は日本人。ロンドンと東京で育ち、6歳のときに国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部を訪問したのをきっかけに環境問題に関心を持つ。2021年秋にFAOが主催するワールド・フード・フォーラム(WFF)「Masterclasses for a Better Food Future」にて環境問題に取り組む次世代として紹介され、2022年は自身の絵本『地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること』(KADOKAWA)をWFFで発表した。俳優としても活動する。

森正弥(Masaya Mori) デロイト トーマツ グループ Deloitte AI Institute所長。デロイト トーマツ コンサルティング執行役員。外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。ECや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国の研究開発を指揮していた経験からDX立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。CDO直下の1200人規模のDX組織構築・推進の実績を有する。2019年に翻訳AIの開発で日経ディープラーニングビジネス活用アワード優秀賞を受賞。

Photos: Kaori Nishida Text: Mina Oba

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