室蘭市の住宅街の近くなどでクマの目撃情報が相次いだことを受けて、市の職員が現場周辺のパトロールを行いました。市では「朝方や夜中はクマの活動が活発になるので、不要不急の外出は控えてほしい」と注意を呼びかけています。
室蘭市では、今月１２日から１３日にかけて、住宅街の近くなどでクマの目撃情報が相次ぎました。
具体的には、▼１２日午後１０時３５分ごろに中島本町３丁目付近、▼１３日午前零時５０分ごろに知利別町４丁目付近、▼１３日午前零時５５分ごろに天神町付近、▼１３日午前６時１０分ごろに崎守町付近で、このほか足あとも複数確認されました。
クマが出没した場所の近くに住む８０代の女性は「この辺りで出るとは思いもしませんでした。５０年ほど住んでいますが、１度も聞いたことがありません。怖いので夜は家から出ないようにします」と話していました。
また、７０代の女性は「この辺りでクマが出たと聞いたことは今までにないです。買い物に行くときなどにも通る道なのでびっくりしました。子どもたちも心配です」と話していました。
また、警察によりますと、１５日午後４時１０分ごろ、室蘭市中島本町３丁目付近で体長１メートルほどのクマを目撃したという情報が車で通行していた人から寄せられたということです。
この場所は住宅街に近く、付近には病院もあり、警察はパトロールを強化するなどして警戒にあたっています。
【小学校では】
クマの目撃情報が相次いでいることを受けて付近の小学校では、保護者に必要に応じて子どもを送迎してもらうよう呼びかける対応をとったところもあり、下校する子どもを車で迎えにくる保護者の姿が見られました。
小学３年生の男子児童の母親は「自宅が山の方なので、クマが出たのは怖く、子どもたちだけで歩かせるのは不安で迎えにきました」と話していました。
一方、小学５年生の女子児童は「怖い。友達と集団で一緒に帰りたい」と話していて、迎えに来た母親は「普段は迎えには来ていませんが、今日はやっぱりクマが出たので怖いと思い迎えに来ました。クマが出たのがうちの目の前の公園だったので驚いています」と話していました。
【市がパトロール】
室蘭市は１５日、地元の猟友会などとおよそ１０人で目撃現場のそばにある知利別公園のパトロールを行いました。
この公園は、ＪＲ東室蘭駅からおよそ２キロ離れた小高い山の中に整備されていて、参加した人たちはペアを組んで山を登りながら状況を確認していました。
市によりますと、今回のパトロールでは、クマの痕跡は見つからなかったということです。
室蘭市地域生活課の中野茂樹課長は「住宅街に近い場所にクマが出てきたことに正直驚いています。特に朝方や夜中はクマの活動が活発になるので、できるだけ不要不急の外出は控え、十分に注意してほしいです」と話していました。
【クマ目撃は最多ペース】
ことしに入り、今月１１日までに道警に寄せられたクマの目撃情報の件数は３３９件で、年間の件数が過去最多だった去年のペースを上回っています。
道警によりますと、今月のクマの目撃件数は１１日までに１００件寄せられていて、ことしに入ってからは合わせて３３９件に上っています。
これは、去年の同じ時期と比べて４０件多く、統計をとり始めてから年間の目撃件数が過去最多だった去年の２２４０件を上回るペースだということです。
また、ことしに入ってクマに襲われてけがをしたのは２人で、▼２月には函館市の山林でせんてい作業をしていた６０代の男性が手や足にけがをし、▼先月には道東の厚岸町で犬の散歩をしていた３０代の女性が頭や太ももをかまれる大けがをしました。
警察によりますと、４月から６月にかけては山菜採りなどで山を訪れてクマと遭遇するケースが多いとしていて、道警は、▼複数人で音を鳴らしながら行動し、▼クマを目撃しても絶対に近づかずに警察に通報するよう呼びかけています。
【専門家の話】
ヒグマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授は「今年は雪どけが早く、ヒグマの活動開始も早かったので、春先から全道的に出没情報が多いような印象を受けている。５月に入ってからはヒグマは繁殖期や子グマが親離れする時期を迎え、経験の浅い個体などが人前に姿を現しやすくなっている。室蘭のようにこれまでヒグマの出没が少なかった地域でも出没するようになったので、これまで確認されていない地域でも注意が必要だ」と話していました。
その上で、山菜採りや登山など人間の活動も活発になる時期だとして、「犬の散歩でヒグマを呼び寄せてしまったり、シカの死体を食べているヒグマに近づいてしまったり、これまでなかったような事例もあるので、事前に訪問先の情報を収集し、現地でも周囲の様子に気を配るなども重要だ」と呼びかけていました。
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