累計800万部のベストセラー作家、本田健さん。去年、著書『happy money』で世界40カ国以上で出版を果たし、今年は念願の海外講演ツアーの予定だった。その計画が全て中止に。前半に続き、「事態をどうとらえ、どう行動を変えていったのか」を問う。
強制終了の前に自分でリセットを選択する
―― 有事の際でなくても、本田さんの人生って、自分でリセットされているでしょう? 29歳の時に仕事がうまくいっていたのに、ブチッと、セミリタイアされていますよね。経営コンサルタントをされていた20代の頃はどのようなお仕事ぶりだったんですか。
本田 僕は、すごい仕事人間だったんです。そうじゃないと成功できないと思ってました。クライアントには、24時間いつでも電話してくださいって言っていました。
―― 当時クライアントって何人ぐらいいたんですか。
本田 百数十人いましたね。クライアントには、当時、珍しかった携帯電話の僕の番号を渡してました。顧問契約の時に、「24時間いつでも電話してもらって大丈夫ですから!」と言っていたんです。
―― それくらい寄り添って、自分のプライベートの時間より仕事を優先していた。
本田 はい。でも、それをやっているときに、妻の妊娠が分かって、しばらく休むのも有りかなと思った。僕の中では3週間ぐらいのつもりだったんです。それが、1カ月になり、2カ月になり、半年になり、1歳の誕生日まで、となり、そうこうするうちに4年経ってしまったというのが実情です。
―― その間に考え方も変わったんですか。
本田 そうなんです。今度、本当に何か仕事をやるときには、やっぱり、人生を懸けた、世界のために役立てるようなことをしたいと思いました。それまでは時間をかけて、じっくり考えようと。
お金持ちの人をもっとお金持ちにすることに興味を失った
―― では、最初から、3、4年間は子育てのためにセミリタイアしようと思っていたわけではなくて、妊娠、出産、育児休暇みたいな気持ちだったのが、延びていった。それは、娘さんが可愛かったから?
本田 可愛かったというのもあったんですが、なんか、人の税金の計算をする気が失せてしまったんです。
―― それは、どういうことですか。
本田 クライアントはそれなりにお金を持っている方たちでした。お金持ちの人をもっとお金持ちにすることに興味を失ったんです。
―― どうしてですか。
本田 それが彼らの幸せにあんまり貢献している感じがしなかったのと、どっちみちサポートするんだったら、今、お金で困っている人をサポートしたほうがいいんじゃないかなと思えてきたんです。
―― お金持ちの人をさらにお金持ちにしても、もっともっとと欲が深くなって、とても幸せそうに見えなかったということですか。
本田 そうなんです。その人たちからお金をたくさんもらったけれども、何か、それもあんまり幸せな感じがしなかったんです。
「自分で決めないと、天から強制リセットされるぞ」と言われて
―― でも、「1度リセットします」と言ったら、その百数十人のクライアントさんたちは大ショックで、「そんなこと言わないで」と言われませんでしたか。
本田 言った人もいたし、怒った人もいたし、応援してくれた人もいましたね。
―― そういうことでリセットしたくてもできない、しがらみで切るに切れない人っていっぱいいると思うんですが。
本田 そうですね。これは僕のメンターが言ったことなんですが。「人生で時々止まるクセをつけないと、何か、澱(おり)みたいなものが心と頭に残っていくよ」と。アメリカの大学教授って、7年間に1回、サバティカルといって、1年間休めるんです。なので、7年に1回ぐらいはちゃんと休まないとダメだよということを教わったんです。
―― もし、休まなかったらどうなるんですか。
本田 休まなかったら、前と同じパターンで仕事をして、前と同じ考え方で生きることになってしまいます。だから、そうすると、結局、新しいアイデアも浮かばないし、フレッシュに仕事をやることができなくなっちゃうんです。
―― 7年たったら、マンネリになっちゃうってことですか。
本田 はい、そうです。
―― 「止まる」ということで、クライアントにはどういう説明をしたんですか。
本田 いろんな他の会計事務所を紹介したり、弟が税理士になっていたんで、任せた部分もありますが、僕自身は「もうしばらく仕事はやらない。ちょっとお休みします」という話をしたんです。
―― で、実際に休まれた。
本田 はい。結局、僕がメンターに言われたのは、「自分でそうしないと、天から強制リセットされるぞ」って言われて、脅かされたんです。それは、例えば、病気になったり、仕事で大失敗したり、結構、成功している人って、みんなそれをやられているんです。
―― 確かに、そういうのはあるかもしれませんね。仕事を頑張すぎている人に限って、何か強制的に休ませるようなことが起こるかも知れませんね。
本田 そうなんです。軌道修正させる意味でも。だから、メンターに「自分で人生のリズムを整えたほうが楽だよ」と言われていたんです。
人生の強制リセットは、大抵、いいことのために起きている
―― ということは、コロナ禍で仕事が難しくなってきた人は、ある意味、強制リセットをかけられていると思ってもいい?
本田 はい。だから、この状態にタイトルを付けるとしたら、『人生の強制リセットをエンジョイする』とかがいいと思います。
―― リセットを楽しむ。
本田 そして、それは大抵、いいことのために起きているんです。人生の強制リセットが起きて、会社からリストラされて、自分で経営するようになった人。仕事を辞めさせられて、私は仕事をし過ぎていたから婚活しようと思った女性。その人はその後、結婚して子どもを2人持ちました。それまでのパターンが止まらないことには、他のことができないんですね。
―― いったん止まると、違う流れになる。
本田 そうです。なので、自分で止まれない人は、何かに、誰かに、強制リセットされるといいと思うんです。大抵、そっちの方が痛いんですが……。
―― 本田さんの場合は、自らリセットをしてきたから、リセット慣れしているというか。強制終了になったとしても、あんまり驚かないし、執着もしないということなんですね。
本田 そういう意味では、僕の人生でも強制リセットが何回か起きているんです(笑)。
―― 29歳の時に4年間セミリタイアして、その後もありましたよね。
本田 36歳か37歳かな。ちょうど、7年後ぐらいですよね。37歳から2、3年、アメリカを行ったり来たりしていたんです。
―― その時は、住むところを変える、環境を変えたわけじゃないですか。
本田 僕はその頃、アメリカで出版デビューしようと思っていたんです。
―― それで、翻訳本も出されたりもしてましたよね。
本田 はい。虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたんですけれども、まあ、そのタイミングじゃなかったんです。
それまでのパターンが止まらないことには、他のことができない
―― そういう時はどうするんですか。動きを止める?
本田 基本的に休むようにしているんです。震災のときもそうだったし。とりあえず、1回立ち止まる。強制リセットがかかったときには、僕の中の人生のOSをもういっぺん、再起動し直す。何をしないといけないのかということを必ず考えるようにしているんです。
―― 日本人は休めと言われても休めない、休まない。そんな状況にないし、そもそも休み方が分からないんです。休むというのは、横になる、寝込むことだと思っているくらいに。
本田 だから、体調を崩したり、精神や身体を壊したりして休むんですよ。あるいは事故に遭って初めて休まざるを得ない状況に追い込まれるということですね。
―― 本田さんは、休んでいる間って、何をされていたんですか。
本田 家族とずっと一緒にいましたね。あと、僕の場合はたくさん本を読んでいました。映画を観たり、家族で旅行に行ったりしてましたね。
―― では、知識や経験を積む感じですか。インプットするみたいな?
本田 必ずしもそういうことではなくて、好きなことをする。僕は、ミステリー小説とかも好きだから、江戸川乱歩とかルパンとか。子ども時代にずっと読んでいた本ってあるじゃないですか。それとか、『ハリー・ポッター』みたいな小中学生がはまりそうな本を読んだりとかしていました。
―― それは、子供心に戻るという意味ですか。
本田 とにかく夢中になることをして、頭を空っぽにする必要があるんです。そうしないと、真っ白な状態で、時代の風が読めなくなっちゃうんです。
―― 頭にいろいろものを詰め込んでいたら。
本田 そうですね。いったんいろいろリセットしなくちゃいけないと思います。例えば、この7、8年、株で成功した人は、暴落したら必ず買えというのが成功の秘訣だったんです。だけれども、この古い成功の法則を手放さなくちゃいけない可能性があります。
―― 古い習慣、古い考え方を本当に手放さないといけないとき。それが今、世界的にも起きているというわけですね。
本田 そうですね。それが今年、そして、これからも続くと思います。
これは絶対無理だと思ったときから、オンライン対応に
―― 本田さんは無理やり何とかしようという悪あがきはしたことがないんですか。
本田 それも散々やりましたけれども(笑)、やっても駄目なときは駄目なんですね。
―― それで悟ったと。
本田 はい。だから無駄な努力をするよりは、進路変更する。急な予定変更や計画倒れは「ノー」のサインじゃなくて、「別の場所に道があるんだ」というサインですから。
―― いい意味で、「道を変えろ」というサイン。それに素直に従う。
本田 そうです。だから、僕の場合は、「今年は世界でも日本でもリアルセミナーはできませんよ。だから、やりたいなら、オンラインにしなさい」ということですね。なので、武漢のセミナーが中止になってから、ここからはもう全部オンラインでやるぞといって一気に準備を始めたんです。
―― オンラインへの切り替え方が素早かったですね。
本田 まずカメラができる人、映像の専門家、ライトとか、全部買いそろえて、2月にはもう準備がばっちりOKだったわけです。
―― リアルなセミナーをされていたのをオンラインに。Facebooライブ、LINEライブ、オンラインサロンも始められたし。その前に、去年から『本田健書店』も準備されていた。これもリスクヘッジの1つでしょうが、たまたまのタイミングだったんですよね。
本田 直感的に、そろそろリアルだけじゃなくてオンラインもしていかないとと思っていました。現実的に紙の媒体よりもオンラインのほうがコストは安くなるので、準備はしていましたね。
千人単位だった観客が、数百万人の視聴者に
―― 海外のリアル講演はなくなったわけですが、オンラインで開催できたんですよね。
本田 そうなんです。
―― 実際、どれくらいの方とつながりましたか?
本田 びっくりしたのは、今までだったら講演会というのは、千人とか二千人規模だったんです。でもZoomでやりだしたら、その何倍もの人が来たわけです。FacebookライブやYouTube配信だと、30万人とか、50万人の人たちが見てくれた。今までに累計で600万人以上の人が見たのかな。この半年で。だから普通にリアルでやるよりは、全然たくさんの人たちに広がったんです。
―― すごい。千人単位が数百万人になったということですよね。
本田 はい。だから僕のことを知っている人の数もすごく増えたんですよね。
―― それは3月から始められて。
本田 本格的にはそうですね。
―― 今まで本田さんのセミナーに来られる方というのは、ビジネスパーソンが多かったじゃないですか。LINEライブとかすると、どんな層が増えましたか。
本田 主婦の人も学生も新しい層としては見ていただいていると思います。
―― 今まで子育てで行けなかったという方々も気軽に家で見られますしね。
本田 例えば、ある主婦の人がメールをくださったんですが、YouTubeで黒柳徹子さんの番組を見ていたら、急に別の番組に切り替わって、男の人が話し出して、そのまま聞いていたら、何かこの人いいこと言うなと思ったら、本田健さんだったみたいな(笑)。
―― では、本田健さんを知らなくて、「面白いな」「この人何だろう」という人もいると。本田 そういう新しい出会いというのは僕じゃ作れないけれども、YouTubeが作ってくれた。
―― やっぱり若い層も増えたんじゃないですか。
本田 そう思います。だって僕は、今まで本を読む人としか出会いがなかったわけですよね。「本田健さんの本は一冊も読んだことないけど大ファンです」という、僕としてはあり得ない、そういう若い世代と出会えるようになったんです。
―― セミナーだったら、お金を払わないことにはそこに行けないわけだけれども、無料で本田さんの話が聞けたりするわけだから。
本田 そういった意味では、全く新しい人たちとの出会いが急に訪れたんですよね。
―― セミナーに行きたくてもなかなか行けない海外に住んでいる方たちともつながった。
本田 そうですね。全世界、いろんなところから視聴されていますね。
―― 英語でのオンライン講座もされているんですね。
本田 そうです。世界を相手に講演をするようになって、いろんなことを知りました。例えば、日本時間、ちなみに世界的には、JSTって言いますが、14時というのはすごくいい時間なんですけれども、ロサンゼルスは21時なんです。ニューヨークは24時で、ホノルルは19時、ロンドンは5時です。クアラルンプールは13時、インドは10時前後。オーストラリアのシドニーは16時ですよね。なので、僕のセミナーというのは今、世界を対象にするときは、午後からスタートするんです。
朝イチでアメリカ、午後はヨーロッパ、夜は日本で講演ができるようになった
―― 実際にいろいろな国の方が聞かれる場合、国によってはコロナの感染者、死者数が非常に多くて、とても深刻。どういうお話をされるんですか。
本田 基本的に今まで話してきたことと同じ話ですけれども、「これからどう生きるのか」という話をしています。
―― では、国単位でどうのじゃなくて、人間としての普遍的なお話をされているんですね。
本田 はい、そうですね。
―― 今、英語圏の人たちの会員はどれくらいなんですか。
本田 会員としてはまだ組織していないんです。僕は各国のセミナーに招かれています。例えば、先日もエストニア、ポーランド、ドイツ、スペインの会社に招かれて。それぞれ数千人から1万人ぐらいの大きなセミナー。毎年ドームでやるようなイベントに招かれているんですよね。
―― そういうイベントでは、どういうテーマで話してほしいと依頼されるんですか。
本田 今のところは、やっぱり僕の本の『happy money』というテーマなんですけれども。幸せなお金の使い方をして、これからの時代をどう生き抜くかという。
―― つまり、オンラインのおかげで逆に機会が増えたということですよね。
本田 そうなんです。だから、セミナーを、朝イチでアメリカ、午後はヨーロッパ、夜は日本を対象に行なうということが可能になったんです。
―― リアルだったら移動だけで1日が終わりますものね。オンラインならワープできる。
本田 プライベートジェットを持っていても、そんなのは無理ですものね(笑)。だからZoomというテクノロジーがあれば、アメリカとヨーロッパと日本、同じ1日の間に3つのイベントができるんです。これは想定外でしたね。
―― すごいことですよね。移動時間やかかるお金も相当だったのが、その分浮きましたね。
本田 飛行機などの旅費が1,000万円以上減っている。成田空港や現地の空港とホテルを往復するにも、ハイヤーだって何十回も乗らなくちゃいけないわけじゃないですか。そのお金も時間もいらなくなったわけです。
―― 移動時間も減っているわけですよね。
本田 そうです。だから、ドイツのフランクフルトで開催された1万人のイベントに出た5分後には、家族3人でご飯を食べていますから。
―― 「2020年は海外に行くから、家族ともなかなか会えないかも」と言われていたじゃないですか。
本田 それは全然違ったねということですよね。旅をしているときは何か「寂しい」とか「もっと一緒にいたい」とか、僕がアメリカから帰ってきても、「お疲れさま。人に喜ばれてよく頑張ったね」みたいな感じだったけれども、今は収録室からドア3枚隔てただけなのですぐに帰ってこれます。30秒ぐらいかな。僕としては1万人の人たちに講演して、「イエーイ」みたいなハイテンションな感じなんだけれども、家族は、「ああ、お疲れ」「早く食器並べて」みたいな感じです(笑)。
―― すぐに日常に戻れるわけですね。
本田 以前は、仕事をすごくやった達成感で成田から帰ってきたら、「お疲れさま」だったのに、「早くナプキンとキャンドル用意して」みたいな、やや雑な扱いです(笑)。そういう意味では、ライフワークをやっている感がだいぶなくなりましたよね。
―― でも、なんか楽しそう。ずっと家族と長くいられるわけですね。何かそういう意味で変化はありましたか。
本田 僕らはもともとずっと一緒にいたから、時間が長くなったからとか短くなったからというのは、あまり関係ないかもしれません。僕の中のライフワークとプライベートの気持ちがうまく切り替わりにくくなったことぐらいでしょうか。
思わぬ恩恵と経費削減
―― でもオンラインに切り替えたおかげで思わぬ恩恵や経費削減があったわけですよね。
本田 そうですね。あと僕は、月間何十人もの人にご飯をご馳走していたんです。
―― 打ち合わせや会食がありますものね。
本田 はい。ランチ中心ですが、よく6人とか10人で会食をしていましたが、それもかなり減りました。
―― 人間関係はどうやって保たれたんですか。
本田 「ちょっとZoomしましょう」とか、よくやってます。深い人間関係ができていたら、一緒にご飯を食べなかったから関係が切れるかというと、そうでもないですよね。
―― 会社のスタッフの方とはどうでしたか。
本田 それぞれ自分がもともと住みたかった地域に引っ越したから、みんな自由にしています。だからリアルに会うことは、今はほとんどないですね。
―― 皆さんテレワークで、好きなところにいていいよと。そういうのも割と早い段階で。
本田 3月ぐらいからですね。
―― では今は、東京でのお仕事というよりは、八ヶ岳がほとんどということですか。
本田 そうでもないです。東京の書斎にもいろいろ資料があるので。東京の空気でやりたい仕事と、八ヶ岳でやりたい仕事があるので、使い分けています。街の持つエネルギーもありますから。
―― いち早く生活を変えたことの1つが、オンラインに切り替えたこと。次にしたのは。
本田 空間を作りました。スタジオを新たに作るのもそうだけれども。
―― 場所を整えた。何かその点で「こういうことをやりました」というのはありますか。
本田 やや風水的に言うと、火と水といろいろな要素が要るんです。だから今、水が流れているのが聞こえますかね。部屋に小さな噴水があるんです。ここはちょっと特殊で、研修センターとして使っていたくらいで、建坪だけで300坪あるから、いろんなことができます。広さは、100平米のマンションがざっくり10個ある感じです。そこをライブラリーにしたり、書斎にしたり、空間ごとに用途を変えました。
―― オンラインライブを見させていただいたりすると、リラックスした空間でパンダのぬいぐるみが出てきたり、書斎で本棚の前だったり、空間遊びじゃないですが、ただの平面じゃなくて、スタジオ的な工夫をされたりしていますよね。
本田 そうですね。すごくぜいたくな話ですけれども、エリアで分けているんです。例えば、本を楽しむ部屋、ゆっくりするソファーのコーナーもあるし、すごく集中する部屋もあるし、書斎だけで6部屋ぐらいあります。赤い部屋で原稿を書くのと、金色の部屋で書くのとでは気持ちが違いますから。
―― つまり、世界のあちこちに移動できなくなった分、自分の空間にお金をかけて、快適にできるようにしたということですか。
本田 そうですね。そういった意味では「自宅リゾート計画」と呼んでいます。
―― それは富裕層だからできることじゃないんですか(笑)。東京から移動して、八ヶ岳で滞在できるようにされて。
本田 東京とか大阪を出れば、もっと広い空間を持つことはできると思います。アメリカでも、例えば30万人がニューヨーク市内から出ていますからね。八ヶ岳の森の中ですべてができるようになったので、家から一歩も出なくても全然大丈夫です。
―― それをいち早く着手されたわけですね。
本田 空間を自分の好きなようにするには時間とお金がかかります。内装を変えるのでも、やっぱり打ち合わせをしてから何カ月もかかります。冬に感染が拡大すると予測していたので、そのための準備をしていたのですが、結局半年かかりましたね。緊急事態宣言が明けてからすぐ、5月から取りかかりました。ガーデンもそうだし、ライブラリーもそうだし。寒いので二重窓にしたり、暖房設備を新たに入れたりといった作業もけっこう時間がかかりました。
海外に行けない分、籠城計画に切り替えた
―― つまりは、常日頃からやってきた、「いくつものプランを持つ」「進路変更をする」というのを、実際にやったということですね。「どうやったら予定通りにできるか」「何とかして、チケットを取れば、どこかの国に行けるかも」とか、無理に計画を推し進めるんじゃなくて、さっと切り替えたら、その分、次のことが早くできた。
本田 海外に行けない分、籠城計画に切り替えた、みたいな感じです。
―― ステイホームでね。
本田 僕の場合はオフィスもスタジオもくっついているから、ステイ・アット・スタジオもあるわけですよね。撮影ライトを全部セットアップしている部屋だけでも4つあるので。
―― 実際に、放送局を作っちゃったんですね。
本田 はい。インターネットもものすごく速いのが入っているし。周りにインターネットを使っている人がほとんどいないので、800メガのスピードが出ます。
―― 3月、こういうことが起きるだろうという予測のもとに配信もされていたじゃないですか。そのときに、各業種についてもいろいろなアイデアを出されていて、それを自分の場合はどうする、ということで実践されたわけですね。本を紙じゃなくてオンラインにする、セミナーをリアルじゃなくてオンラインにする、滞在場所を変える、ということを。
本田 そうですね。
―― 実際に、自分のやられていること、計画していることを公にすることで、勇気をもらえた、心構えができた、早めの準備ができて良かったなという人も多いと思います。
本田 それが、僕の本当の目的地、「世界中の多くの人に伝える」ということだったので、うれしいことですね。思わぬ形で夢は叶ったんです。
―― 夢の叶え方はいろいろありますものね。こうでなければいけないということは、本当はないということですね。
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