「最新の研究では、室内の湿度を上げればウイルスは長い時間浮遊しないとされ、粘膜や皮膚の乾燥、脱水症状も防ぐことができます」 理化学研究所がスーパーコンピューター「富岳」で、オフィス内で1.8mの間隔で2人が向き合っている場面をシミュレーションしたところ、湿度30%では飛沫全体の6%近くが対面する人に到達したが、湿度60%と90%では、その到達が2%に抑えられた。 湿度アップの感染予防効果がみられたわけだ。では、室内の湿度は具体的に何%を目標にすることが望ましいのだろうか。 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室は、昨年11月の事務連絡で寒冷場面における新型コロナの感染防止のポイントとして「適度な保湿」が必要とし、「湿度40%以上を目安」とした。 英イエール大学の研究では、新型コロナは湿度60%に近くなると、ほかの湿度に比べて早く減退した。また厚労省によると、新型コロナウイルスは湿度70%(室温20℃)のときに感染力が弱くなったとの報告がある。 さらにインフルエンザウイルスの場合、湿度50~60%(室温22℃)で生存率が下がるとされる。 富岳のシミュレーションと合わせても、湿度を高く設定するほど感染防止の効果が上がりそうだ。 「乾燥やウイルス対策としては、室内温度20℃に対して、湿度は50~60%がベストでしょう」と指摘するのは、国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さん。 「湿度は高ければ高いほどいいわけではありません。湿度が60%を超えると、暖かくてジメジメした環境を好むカビが繁殖します。しかもダニはカビを好物とするため、カビの繁殖地にはダニも増えるという悪循環が生じます。 カビやダニは不潔なだけではなく、それらのフンや死骸を吸い込んだり接触したりすると、アレルギー症状を引き起こすケースが多い。よく見られる症状としてアトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息、鼻炎、目のかゆみがあります。 また、カビを吸い込むことで発症する過敏性肺炎は、慢性化すると厄介な病気です」(一石さん) 湿度を調節する大きな武器となるのが加湿器だ。家族3人暮らしの2LDKを想定した場合、どこに設置すればいいのか。広島工業大学環境学部建築デザイン学科准教授の宋城基さんが効果的な使用方法を説明する。 「加湿器を置く場所の大原則は常時、人がいるところです。短時間しかいないトイレや廊下は加湿不要ですし、人の集う『リビング』と『寝室』には加湿器を設置すべきでしょう」
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