◆年間を通して軽井沢を楽しめるように
高須:星野さんの生い立ちを遡りたいと思います。元々、お父様が軽井沢で旅館を経営されていたんですよね。
星野:そうですね。私で4代目の温泉旅館でして1914年の開業です。
高須:創業106年ですか、すごいですね。
星野:僕が生まれたときには旅館がありましたし、自宅にはお風呂がありませんでした。その代わり、温泉の大浴場に毎日入っていましたね。
高須:軽井沢は昔から避暑地として栄えていた場所だったのでしょうか。
星野:東京があまりにも暑いので、1888年に宣教師が軽井沢に別荘を建てたことが(避暑地化の)はじまりでした。イギリスやカナダには、夏は涼しい場所に行って、研修会をしたり滞在する習慣があったそうなんですね。どこか涼しいところはないかと探した結果、軽井沢が選ばれたということです。別荘が建ってから、日本人も“いい習慣だ”ということで追随して、そのあとにホテルや私たちの運営するような温泉旅館が建ちました。
高須:そうなんですか、すごいですね。
星野:軽井沢の夏は、ものすごく大きなコミュニティができていましたね。私の子どもの頃は、東京の質のいいお店が夏のあいだだけ開業していたりもしました。
高須:子どもの頃と比べて、今の軽井沢は変わりましたか?
星野:大きく変わりましたね。エアコンの登場によって、現在の日本では避暑地のニーズがなくなったんですよ。ですので、私が軽井沢の事業を継いでからは、“避暑地・軽井沢”という言葉を使うことをやめました。コンセプトとしてのニーズがないし、“避暑地”という言葉を使うことで7月と8月しかお客様が増えない、というリスクがありました。なので“避暑地からいかに離れるか”というのが、最初に取り組んだテーマでした。
(中略)
星野:避暑地というコンセプトから離れて1番大きかったのは、自然のなかでの生活から、楽しさ・面白さ・豊かさを見出せるようになったことです。それらをアピールすることで、夏だけではなくほかの季節からもいいところを見つけることができるのですね。軽井沢のテーマを「自然のなかにある非日常体験」に変えることで、年間での需要を生み出しました。
高須:星野さんが手掛けてから、だいぶ変わったのですね。訪れる人たちも変わってきたのではないですか?
星野:そうですね。年間を通して軽井沢にいらっしゃるお客様が増えました。すごく大きな変化を実感しております。
◆熊と人が共存できる環境づくり
高須:軽井沢ではたまに熊が出没するそうですね。
星野:別荘地がどんどん広がりましたからね。熊からしてみれば「人間たちが突然やってきた」という感覚なのだと思います。私たちは、自然のなかでのライフスタイルをテーマにしているので、熊の生息域と別荘地が共存・共栄・共生ができるように取り組んでおります。星野リゾートのグループ企業であるピッキオはエコツーリズムの団体でして、熊の保護活動を受託しています。実は、熊問題を大きく解決することができたのは、ゴミ箱を改善したことだったんですよ。
高須:なるほど。
星野:熊は、別に好き好んで人間を見にきているわけではないんです。別荘の方が入れたゴミ箱の食材を狙って山を降りてきてしまうんですね。そこで、ゴミ箱を改善してにおいが漏れないようにしました。さらに、熊の手では開けられないドアに変更しました。ゴミ箱が開けられないとわかってからは、熊が出てこなくなりましたね。また、軽井沢の森のなかに住んでいる20数頭の熊には発信機を付けています。
高須:ちゃんと、そういうものを導入しているのですね。
星野:熊が別荘地帯に出てこようとすると、ベアドッグという訓練犬とともにスタッフが出動しまして、熊に“人間と熊との境界線”を教えます。
◆利用客が“非日常”を感じるために
高須:星野さんはいろんな国に行かれたと思うのですが、嫉妬するぐらい“すごいな”と感じたホテルはありましたか?
星野:ホテルのすごさというのは、ホテル経営の勉強をしていくと段々となくなっていくんですよね。なぜかと言いますと、財務的な部分を意識してしまうから。すごいなと思っても、よく見ると赤字だったりするホテルはあるんですよ。
高須:なるほど。
星野:ホテル経営は単純なビジネスなのですが、経営を勉強すると生産性だったり利益率だったり、“すごい”の定義が変わってくるんですよ。ただ、世界を見ていると勉強になる要素はあちこちにありましたね。とても参考になったのは、“お客様の声を何でも聞いて楽をしてもらうことは、必ずしもいいことではない”ということでした。
(中略)
星野:星野リゾートの「星のや」だけは、テレビを置かないようにしているんですよ。実家の温泉宿が「星のや」の第1号だったのですが、そこを改築するタイミングでテレビを置かない決断をしました。
高須:顧客のニーズにばかり応えないという考えがあったということでしょうか。
星野:そうですね。なぜ私たちのリゾートに滞在していただけるのか、と考えたときに浮かんでくるのは“非日常”なんです。東京にはない日常を作る上で、旅館と駐車場の距離を離しましたし、すべての世界観を隙間なく構築しました。客室にも情熱を注ぎ込みましたし、我々の思いが詰まった空間が作られております。
ところが、そこにテレビがあるとスイッチを付けた途端、東京でも感じられる空気が広がり、日常に戻ってしまうんですね。大切な時間を過ごしていただきたいのに東京と同じ時間が流れてしまっては、私たちの宿の商品価値が下がってしまうので、テレビを置かない判断を下しました。
高須:なるほど、そういう経緯があったのですね。
次回9月6日(日)の放送は、引き続き星野さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!
<番組概要>
番組名:空想メディア
放送日時:毎週日曜 25:00~25:29
パーソナリティ:高須光聖
番組公式Facebook:https://ift.tt/2l5MMEL
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September 05, 2020 at 09:00PM
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部屋にテレビを置かない、旅館と駐車場までの距離を設ける…星野リゾート代表が考える“非日常”を感じるリゾート作り - マイナビニュース
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